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マイナンバーカード不保持者への差別が酷すぎる…制度開始後に行政サービス低下も

文=明石昇二郎/ルポライター
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マイナンバーカード総合サイト

差別される「マイナンバーカード」不保持者

 マイナンバーカード(個人番号カード)をすでに取得した人の数は2021年12月現在、日本の人口のおよそ40%に相当する5000万人あまりに達したのだという。政府はこの現状に甘んずることなく、さらなる普及を目指す考えで、まだマイナンバーカードを持っていない人に対し、

(1)マイナンバーカードを取得すると5000円分

(2)マイナンバーカードを健康保険証として利用し始めると7500円分

(3)マイナンバーカードに給付金を受け取るための「公金受取口座」の登録をすると7500円分

つごう2万円分の「マイナポイント」を付与してあげるので、マイナンバーカードを取得しなさい――と呼びかけている。

 さらには、マイナンバーカードを取得している人に限り、新型コロナワクチンの接種済みであることを国が証明する専用アプリの運用も開始。アプリストアで無料ダウンロードできる専用アプリをスマートフォンにダウンロードした後、マイナンバーカードを使い、接種した日やワクチンの種類をアプリに登録しておくと、飲食店やイベント会場などでいつでも表示できるのだという。

 しかし、なぜマイナンバーカードを持っていないと「ワクチン接種済み」証明をしてもらえないのか。昨年末の段階で人口のおよそ8割が接種済みだというのに、その半分の人しか「接種済み証明」をしてもらえないのである。利用できる人の数をわざわざ絞り込んでいるわけだから、新型コロナウイルス感染症の大流行で落ち込んだ景気の喚起策としての観点から見れば、愚策というほかない。

 たとえマイナンバーカードはなくても、12桁のマイナンバー(個人番号)のほうなら誰でも持っているのだから、マイナンバーと接種記録を紐づけして証明してあげればいいではないか。それとも、現在の日本政府が持つデジタル技術ではその程度のことも難しいというのか。

 そもそも、マイナンバー制度が施行されてからというもの、行政サービスのなかには明らかに後退しているものが目につく。なかでも典型的なのは「住民票や印鑑登録証明書の交付」手続きだろう。

 同制度以前は、印鑑登録カードや住基カードを使い、役所や支所、そして鉄道の駅などに設置された発行端末で容易に住民票や印鑑登録証明書を入手することができた。だが、マイナンバーカードが登場して以降はそうした端末がなぜか一斉に撤去され、マイナンバーカードを持っていない者は役所の窓口まで出向き、紙の申請書に手書きで氏名等を記入し、混雑している時間帯であれば20~30分は待たないと入手できなくなった。マイナンバー導入によるデジタル化の恩恵に与ることがまったくできないのだ。

 一方、マイナンバーカード保持者なら、わざわざ役所まで行かなくても、コンビニエンスストアに設置されたマルチコピー機で入手可能なのだという。もはや、マイナンバーカード不保持者に対するいじめである。

 2万円分もの「マイナポイント」を大盤振る舞いする一方で、下々に不便を強いてまでマイナンバーカードをつくらせようとする安倍・菅・岸田の3政権の方針は、芸がないだけでなく、何やら如何わしい魂胆が潜むもののように思えてならない。なぜ、そんな底意地の悪いやり方をするのか。

有難味の薄い「マイナンバーカード」

 最大の疑問点は、かつては「国民総背番号制」と称されたこともあった「マイナンバー」制度自体はすでに完成し、すべての国民に対して個人番号を割り振る作業は終わっているにもかかわらず、なぜそれを行政サービスの向上に活用しようとしないのか――ということだ。

現在、

マイナンバーカードは健康保険証の役目も兼ねることができる。

・いずれ運転免許証の代わりにもなるらしい。

・マイナンバーカードには給付金を受け取るための「公金受取口座」を紐づけできるので、同カードを持っていない人よりも早く給付金を受け取れる。

・買い物の際に「マイナポイント」を使って事実上の割引サービスを受けられる。

などなど、日々の暮らしのさまざまな場面でマイナンバーカードが役立つ“メリット”が喧伝されている。だが、健康保険証も運転免許証も、マイナンバーカードがなければ特別困るというものではない。給付金にしても、マイナンバーカードがなければもらえなくなるわけでもない。となると、マイナンバーカードが不可欠のメリットといえるのは「マイナポイント」くらいのものだ。つまり、カードとしての有難味が大変薄い。有難味が薄いからこそ、政府が発行するポイントの形でキャッシュをばら撒きながらカード保持者増を目指しているようにしか見えない。

 それに、マイナンバー制度とマイナンバーカードが登場した当初は、一生変わらず付き合うことになる番号なので、迂闊に他人に教えてはならないものだと説明されていた。マイナンバーカードにしても、個人情報満載の大切なカードなので普段は持ち歩かず、紛失しないよう自宅等で大切に保管するものとされていた。それがここにきて一転、いつも持ち歩いて積極的に使いなさい。身分証明書としても使えますよ――というのである。たとえ落としても何の心配もいらないほど、マイナンバーカードの安全性が急激に向上したとの話も聞かないが、小さな子どもやお年寄りにまで普段使いさせて大丈夫なのか。

 マイナンバーカードを一人ひとりに持ち歩かせる――。そんな煩わしいばかりの制度設計をした真の目的はなんなのか。政府からは、皆が納得できる説明は何もないままだ。仕方がないので、当方でその「目的と理由」を少しだけ考察してみることにする。

「マイナンバーカード」の正体

 レンタル大手の「TSUTAYA」で知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営するポイントカード「Tカード」の会員情報(履歴)が、裁判所の令状なしに警察へ提供され、犯罪捜査で活用されていたことが明らかになったのは、今から3年前の2019年のこと。この当時、「Tカード」をはじめNTTドコモの「ⅾポイントカード」、交通系電子マネー「PASMO」「Suica」、そして「Pontaカード」などの情報を入手するのは、「捜査の基本」とされていたのだという。

 中でも「Tカード」は、TSUTAYAだけでなくコンビニやドラッグストアなど幅広い店舗で利用され、ポイントの付与と引き換えに、カード会員の読書の趣味や嗜好、それにさまざまな商品の購買履歴や、その店舗の位置情報といったプライバシー情報を収集・蓄積していくものだ。19年当時の「Tカード」会員数は、現在のマイナンバーカード保持者数(約5000万人)をゆうに上回る約6800万人。「民間マイナンバー」と呼ぶ人もいたほどだ。

 しかし、そんな情報がカード利用者に無断で警察に提供されていた事実が報道された後、CCCはカード利用者に謝罪し、警察からの「令状なしの照会」には原則として応じない方針へと変えたのだという。

 その「Tカード」と同様に、マイナンバーカードを日々の生活のなかで頻繁に使ってもらえるようになれば、収入や支出といった納税チェックで活用できる情報や、その個人の趣味嗜好や交友関係、行動履歴といった、治安維持対策でも活用できそうなプライバシー情報や、機微な個人情報を、国が管理・捕捉できるようになるわけだ。言い換えれば、下々の多くがマイナンバーカードを使えば使うほど、“脱税情報”や“反体制運動情報”がデジタルデータで自動的に続々と集まってくるようになる――かもしれないということだ。

Nシステム」「監視カメラ」に加え、「マイナンバーカード」が登場してきたことで、政府が市民一人ひとりの行動を監視する“3種のデジタル神器”システムが完成する日も近そうである。

 ただ、マイナンバーカードを一人ひとりが持ち歩くことが大前提の制度設計なので、デジタルというより、かなりアナログな建てつけである。それに、マイナンバーカードの普及率がこのまま40%程度にとどまれば、穴だらけの“治安対策機能”しか持たない残念なシステムへと堕してしまう。

 つまり、マイナンバーカードの本質は、行政サービスの向上を目指すためのものではなく、巷から機微な個人情報をかき集めてくるための“小道具”なのだろう。だからこそ、その普及のために惜しげもなく税金が注ぎ込まれてきたと思えば、なるほど合点がいく。

 おそらく警察にとって、「Tカード」の情報は犯罪捜査でよほど役に立つシロモノだったのだろう。それが自由に使えなくなった3年ほど前から、政府がマイナンバーカードの普及を強力に進め始めていることも、タイミングが奇妙なほど一致していて、気味が悪い。

 そうした施策を隠密裏に進めてきた裏には、警察官僚上がりの某官房副長官らがいることは、容易に想像がつく。ただ、そんな彼らの多くが政権交代とともに首相官邸を去ったことで、今後、風向きが変わる可能性もある。

 ともあれ、「マイナンバーカード」ではなく「マイナンバー」を活用する制度に設計し直すことだ。そうするだけで、「国民監視対策」としての性格は相当薄まること請け合いである。

 すべての市民や国民の行動をマイナンバーカードで管理・監視する「デジタル警察国家」の出現を防ぐ近道は、どうやら「マイナンバーカードを持たない」ということになりそうだ。
(文=明石昇二郎/ルポライター)

明石昇二郎/ルポライター、ルポルタージュ研究所代表

明石昇二郎/ルポライター、ルポルタージュ研究所代表

1985年東洋大学社会学部応用社会学科マスコミ学専攻卒業。


1987年『朝日ジャーナル』に青森県六ヶ所村の「核燃料サイクル基地」計画を巡るルポを発表し、ルポライターとしてデビュー。その後、『技術と人間』『フライデー』『週刊プレイボーイ』『週刊現代』『サンデー毎日』『週刊金曜日』『週刊朝日』『世界』などで執筆活動。


ルポの対象とするテーマは、原子力発電、食品公害、著作権など多岐にわたる。築地市場や津軽海峡のマグロにも詳しい。


フリーのテレビディレクターとしても活動し、1994年日本テレビ・ニュースプラス1特集「ニッポン紛争地図」で民放連盟賞受賞。


ルポタージュ研究所

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