この夏の参議院議員選挙を控え、あるいは衆参ダブル選挙の可能性も指摘されるなか、5月24日午後3時から東京地裁103号法廷で、「供託金違憲訴訟」の判決が言い渡される。
国政選挙に立候補する場合、公職選挙法によって、選挙区で出馬には300万円、比例代表では一人当たり600万円を国に供託しなければならない。これを供託金という。
選挙区から立候補した場合、有効投票総数の10分の1に達しなければ、供託したカネは全額没収される(国庫に入る)。つまり、日本では事実上、一般人、特に貧しい人は立候補できない制度になっている。
2014年12月の衆議院選挙に立候補しようとしていた埼玉県在住の近藤直樹氏は、出馬に必要なすべての書類を準備したが、供託金300万円を用意できず、立候補を断念した。
そこで近藤氏は、高額の供託金を義務付ける公職選挙法92条は、選挙権に関して財産や収入による差別を禁じた憲法44条但し書き「人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない」に違反するとして、訴訟に踏み切った。
近藤氏は提訴の理由を、裁判後の報告会などでこう述べている。
「おかしいことは自分たちの力で変える。そう思っても具体的に行動する人は少ないから、提訴というかたちで行動を起こしました。
最初はどうしていいかわからず、インターネットなどで情報を集め、宇都宮健児弁護士を見つけ、“ダメ元”で事務所に電話してみたのです」
電話を受けた宇都宮弁護士は何人もの弁護士に呼び掛け、最終的に8人の弁護士で弁護団を結成した。
これまでにも、近藤氏と同じ疑問や怒りを感じて、何人かが供託金違憲訴訟を提起したが、裁判所はまともに審理もせず、口頭弁論を1回か2回開くだけだった。それも、書面の確認をするだけである。
筆者の知人も提訴したことがあるが、原告が法廷で意見陳述させてほしいと主張しても、「書面を出してもらっていますので」と、裁判長はまともな陳述さえ許さず、5分程度で閉廷する始末だった。当然のごとく、過去の同種の訴訟は、原告の主張が退けられてきた。
ところが、今回の訴訟では8人の弁護士が代理人となり、毎回傍聴者も多く、注目の裁判になった。口頭弁論も12回開かれ、原告の近藤氏の尋問も法廷で行われた。
これまでの同種の裁判とは、様子がまるで違うのだ。そのため、原告の主張を一定以上認めるような判決が出るのではないかとの見方も出ている。