1月に現役引退を発表した体操選手・内村航平の妻・千穂さんが、内村と母・周子さんからのモラハラに悩まされ離婚に向けた話し合い中だと20日発売の「週刊文春」(文藝春秋)で報じられている騒動。その周子さんは24日配信の「女性自身」(光文社)ウェブ版記事で、千穂さんの両親が「あることないこと」を「文春」に話していると語り、千穂さん側との確執が覆い隠せない様相となりつつある。
“体操界のレジェンド”こと内村の功績は、改めて説明するまでもない。19歳のとき、自身としては初の五輪となった北京五輪(2008年)で個人総合銀メダルを獲得。続くロンドン五輪(12年)、リオデジャネイロ五輪(16年)で個人総合金メダルを獲得し、世界選手権では09~15年にかけて個人総合6連覇を達成。
だが、その後はケガに悩まされることに。リオ五輪後にコナミスポーツを退社し、国内初のプロ体操選手として挑んだ17年の世界選手権(モントリオール)で左足を負傷して途中棄権。以降、国際大会での優勝からは遠のき、昨年の東京五輪では種目別の鉄棒で落下し、決勝出場を逃したが、今年1月には突如、現役引退を発表し、世間を驚かせた。
内村の母・周子さんも有名人だ。陽気かつパワフルなキャラで世間から親しまれ、体操に関する活動や講演に加え、たびたびバラエティ番組にも出演。自身が運営するスポーツクラブ内村や幼児・児童向け体操教室で指導する傍ら大学院にも通うなど“365日休まない”をモットーとしている。
そして周子さんといえば、深い“航平愛”を隠さないキャラでも知られている。たとえば周子さんは自著『「自分を生んでくれた人」内村航平の母として 』(祥伝社)内で、内村から「あさってから国際大会で遠征があるから、携帯電話を海外でも使えるようにしたい」と言われ、内村の出発前に手続きを終わらせるためにはその日中に書類を速達で送る必要があったため、携帯ショップや郵便局に駆け込んで対応したというエピソードを紹介し、次のように綴っている。
<同じようなことがあっても大喜びで飛び回ります。子どもがいてくれるから愛することもできる。だから『愛しすぎ』なんてことは、ないのです>(同書より)
また、ロンドン五輪直前の内村との会話として、同書にはこんな記述も。
<「じゃあ、いつものように旗を揚げて応援してもいいかな? もし航ちゃんが金メダル取ったらスタンドから飛び降りちゃうかも」そう興奮気味に話すと、「限度があるからね」とくぎを刺されちゃいました>
嫁姑間の確執説
「文春」によれば千穂さんは、そんな内村と周子さん親子からモラハラを受け、病院で摂食障害と診断され、心療内科に通うほど悩んでいたという。
「内村が出場する試合会場の観客席では、いつも周子さんと千穂さんは離れて座ったり、どちらかだけが応援に駆け付けるなど、顔を会わせないようにしているようにもみえた。そのため、“千穂さんが内村を周子さんに会わせないようにしている”“周子さんが千穂さんのことを気に入っていない”という確執説も流れていた。
内村航平は生活のあらゆることを体操第一に置いて考え行動するタイプで、加えてここ数年はケガもあり相当悩んでいたため、“周子さん側”についていたというよりは、千穂さんが抱える悩みが理解できず、それゆえに腹立たしく感じて冷たく当たってしまったのかもしれない」(スポーツ紙記者)
また、別のスポーツ紙記者はいう。
「周子さんは、常に内村とその妹の春日さんのことが最優先で、他のことを犠牲にするのを厭わないタイプ。試合会場でも鉢巻姿で大きな旗を掲げて大声で応援している。そんな周子さんには、千穂さんの内村への献身が物足りないと映ったのかもしれない。ただ、千穂さんにはまだ小さな子供が2人おり、会場に応援に行けないこともあるだろうし、力を100%、内村にそそぐことは物理的に難しく、そのあたりで千穂さんと周子さんの間で埋まらない溝があったとも考えられる」
周子さんは前出の自著内で、
「自分たちは犠牲になってもいい。借金をしてでも航平や春日には試合や合宿に行かせてあげました。子どもには好きなことをさせてあげたい、というのが私たち夫婦の価値観なのです。(略)死にものぐるいで子どものことを考えて、悩んで、自己犠牲を惜しまないことが、答えを導いてくれるかもしれないのです」
と語っているが、内村への自己犠牲を厭わない周子さんの考えが、結果として千穂さんを追い詰めてしまった面もあるのだろうか。
「自分は正しい」症候群
そして周子さんは今回の「女性自身」記事で、千穂さんの両親を“嘘つき呼ばわり”するかのような発言までしているが、精神科医の片田珠美氏は次のように分析する。
「母親の周子さんが『女性自身』の取材に対して、『(息子の嫁の両親が)自分のお嬢さんに都合のいいことをお話ししたんじゃないかと思うんですよ。あることないことね』と答えたのは一体なぜでしょうか。これは、『自分は悪くない』と主張するため、つまり自己正当化のためと考えられます。
こうした自己正当化は、嘘とは違います。嘘であれば、嘘をついているという自覚が本人にありますが、それに対して自己正当化は自分を守ろうとして知らず知らずのうちに行われるので、本人は無自覚です。その点では、自己正当化のほうが嘘よりも厄介ともいえます。
しかも、自己正当化は『自分は悪くない』と主張するためのものなので、何か問題が起きると、その責任を他の誰かになすりつける責任転嫁とセットになることが多いのです。今回の場合、嫁の千穂さんは一時体重が33キロ台まで落ちて、心療内科で『摂食障害』と診断され、抗不安薬を毎日服用しているのですから、その原因が自分や息子にあるとは思われたくないという願望を周子さんが抱いても不思議ではありません。そういう願望が強いからこそ、嫁の両親に問題があるかのような言い方をしたのではないでしょうか。
このように自己正当化と責任転嫁がセットになっているタイプを私は『自分は正しい』症候群と呼んでいます。この症候群は現在の日本社会に蔓延しており、『国民病』といっても過言ではありません。周子さんもその1人なのでしょう。
さらに、『文春』で、千穂さんが心療内科に通うようになった一因として周子さんの言動があると報じられたことについて、周子さんは今回の『女性自身』の記事で『当人じゃないので私にはわかりません』と答えています。周子さんが明確な反論も否定もせず、このような曖昧な回答をしたのはなぜでしょうか。
これは、反論や否定をすると、それに対して千穂さんの側から『事実と違う』『嘘が入り混じっている』などと再反論される恐れがあるため、それを避けようとしたからでしょう。再反論が『文春』に掲載されるような事態になれば、周子さんのさらなるイメージダウンは必至です。そういう事態を避けたいからこそ、曖昧な答え方をしたのであり、賢明な戦略です。ある意味では狡猾といえるかもしれません。
いずれにせよ、自己保身のためです。もしかしたら、周子さんには、自分と息子のイメージが悪化すると、息子の引退後の活動に支障をきたしかねず、それは今後の収入にも響いてくるのではないかという懸念があるのかもしれません。そういう懸念があるからこそ、『自分は悪くない』と主張し続けるのでしょうが、こうした姿勢は千穂さんの病状を悪化させるだけだと思います」
(文=編集部、協力=片田珠美/精神科医)