お笑いタレントの有吉弘行は26日放送のラジオ番組『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN系列)に出演。あるメディアの記者が自身の叔母の自宅に取材に訪れた際のことに触れ、「私の叔母もね、記者のせいで死にました」と発言し、物議を醸している。
この日の番組内では、今月開催された「2023 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の日本代表選手として大活躍した大谷翔平の母親が、週刊誌の直撃取材を受けた際の対応に話題が及び、そこで有吉は次のように発言したのだ。
「私の叔母もね、ピンポンピンポンって押されてね、足も悪いのにピンポン鳴ったからって出ていったらね、転んでね、腰の骨を折りましたよ。記者のせいで」
「死にましたもんね」
そのまま有吉が次のリスナーからのメール紹介に移ろうとしたため、共演者が「逃していいんですか? トコトンやったほうがいいですよ」と制止。すると有吉は次のように語った。
「いいですよ、うちの叔母が記者のせいで死んだとしても、(マスコミとは)持ちつ持たれつですから」
「言ったってしょうがないから。証拠もないし。記者のせいで腰の骨を折ったけど、そのせいで死んだけど、それが記者のせいだとは100%言えないから、まあしょうがないわ」
これを受けてSNS上では次のようにさまざまな声が上がっている。
<高齢者に対する取材は節度を、って言うメッセージ>(原文ママ、以下同)
<記者とかメディアとか、まずは人としての常識から教えないとね>
<これ絶妙なバランスで言及してるよね。許せないけど芸能人と記者なんて持ちつ持たれつの関係なので事を荒立てる気はない、だけど黙って泣き寝入りにはしたくないので釘を刺しておくと>
<何かあると、関係者に突撃 アポも取らずに迷惑をかける マスゴミ>
<たとえ腰の骨折っていなかったとしても、関係ない人がしょっちゅう訪れてピンポン押すだけでも相当な精神負担だよ>
<強い奴には全く嚙みつけないくせに やり易い方にだけ知る権利を振りかざすんだよね。マスコミ>
有吉、過去にもマスコミに苦言
有吉の親族がメディアの直撃取材を受けた例は他にもある。2016年に有吉と現妻で元フリーアナウンサーの夏目三久さんの交際報道が出た際、週刊誌が有吉の母親を直撃取材。母親は「弘行からは交際や結婚についての報告は受けていません」と語っている。22年には有吉は『SUNDAY NIGHT DREAMER』内で、自身の弟が週刊誌から直撃取材を受けたとして「何を聞きたいんだよ」と苦言。続けて、夏目と結婚した当時、週刊誌の記者が有吉の叔母を母親だと勘違いして取材して得たコメントが、母親のものとして掲載されていたと述懐。「叔母さん、こないだ死んじゃったんだ」「DEADしかけの叔母さんにさ、取材するんだよ。嫌だろ? 本当に」などと語り、怒りをあらわにしていた。
このほか、親族ではないが、有吉と同じマンションに住む住人に取材がおよんだことも。今年2月、『SUNDAY NIGHT DREAMER』内で、マンションの管理人から「女性週刊誌の人が『有吉さんはここに住んでるんですけど、どんな人ですか』って聞いてましたよ」と伝えられたと明かし、「住人にもさ、住んでるかどうか知らないのに『有吉さん、ここに住んでるんですけど』って、アイツらが聞いてるんだよ」「本当に気持ち悪いよね」と吐露していた。
週刊誌記者はいう。
「以前は普通に行われていた、タレントの自宅前にマスコミが押し寄せて玄関口のチャイムを押すという行為は、タレントが犯罪を犯した際など特別なケースを除き、現在ではNGになっている。プライバシーの侵害や迷惑行為として所属事務所から猛烈なクレームを受けたり、警察に通報される可能性もあるし、事務所サイドが『どこどこの週刊誌が自宅のチャイムまで鳴らしてきた』と騒ぎ立てれば、メディアのほうが世間からバッシングを浴びるリスクもある。なので、記者が直撃取材をする際はターゲットが自宅を出入りするタイミングで声をかける。
媒体にもよるが、タレントの親など親族を直撃取材する際も同様だが、取材対象者がなかなか家の外に出てこなかったりすると、チャイムを鳴らすケースはある。タレント本人の家のチャイムは鳴らさないのに、なぜ親族の家のチャイムは鳴らすのか、モラル的に問題ではないかと批判されれば、反論しようがない。今回有吉が話しているような、記者がチャイムを鳴らすことで高齢の親族の方が転倒して重傷を負うというリスクは、ほとんどの記者は想像だにしていないだろう」
焦点は因果関係
もし仮に亡くなった有吉の叔母の親族が警察に通報したり、当該メディアを相手取り損害賠償を求めて民事訴訟を起こした場合、メディアが法的な罪に問われる可能性はあるのだろうか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。
「記者が『相手が死ぬこと、ケガすることを想定してやったこと』ではないので、刑事事件にはなりません。次に、民事上、損害賠償ができるかどうかですが、こういった事件では『因果関係』が重要となります。まず『因果関係』の基本である『条件関係』という、『このことがなかったら、これはなかった』という関係があるかどうかですが、確かに記者がピンポンしなければ亡くなることはなかったという関係にはあります。しかし、これだけで『因果関係』が認められるわけではなく、『相当性』という考え方が必要です。要するに、『相手が転ぶことを予想できたか、それを回避できたか、普通、そう考えるか』といったことを検討するのですが、ピンポンして相手が転んで骨を折り死ぬことまでは想像できないので、『因果関係』は認められないでしょう。したがって、有吉さんの『まぁしょうがないわ』は的を射ているわけです」
(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)