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ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」第16回

なぜ銭湯は潰れない?利権と補助金まみれ、脱税横行のあきれた業界の実態~銭湯店主が激白

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昔ながらの番台(「Wikipedia」より/Chris 73)
 「ブラック企業アナリスト」として、テレビ番組『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)、「週刊SPA!」(扶桑社)などでもお馴染みの新田龍氏。計100社以上の人事/採用戦略に携わり、数多くの企業の裏側を知り尽くした新田氏が、ほかでは書けない「あの企業の裏側」を暴きます。

「この業界で、脱税してない人はほとんどいない。正直に申請している銭湯なんてほぼないだろう。銭湯の99%は、何かしら経理をごまかしていると断言できる」

 インタビューした老舗銭湯の店主は、さも当然かのように言い放った。

 前回記事『銭湯、客数減でもなぜ潰れない?多額補助金、水道料金実質無料、税金免除…』にて、利権と補助金にまみれた銭湯業界の構造をお伝えした。税金を原資とする地方行政予算が、利権とともに銭湯業界を生き長らえさせることに投入され、浪費されているのである。

 今回は、そんなカラクリが機能している仕組みについて説明しよう。

●銭湯の脱税スキーム

 そもそも脱税をするためには「経費」か「売り上げ」をごまかす必要があるのだが、銭湯では、これがいとも簡単に行えてしまう。

 まず「経費」について、銭湯の経費といえば「湯」だ。『銭湯、客数減でもなぜ潰れない?~』で言及した通り、水道料は大幅に減額または免除される。従って、かかる経費といえば、湯を沸かす燃料代くらいだ。

 さて、「売り上げ」について検証してみると、「共通入浴券」が銭湯の摩訶不思議な利益を生み出す強力アイテムとなっている。

 通常、金券というものは一度使用すると、受け取った側はそれを再度販売することはできない。例えば、図書券を受け取った書店は、それをそのまま他の客に売ることはできない。しかし銭湯では、なぜか可能になってしまう。銭湯の共通入浴券は、使用された券をその場で再度売ることが認められているため、何度でも使用が可能になるのだ。

 具体的には、このように使う。例えば100人の客が入った銭湯が、売り上げをごまかして「客は50人だった」と申請したとする。それに対して、有能な税務署員が店の外で来客数をカウントしていて、「100人入っていたじゃないか」と指摘したとしても、銭湯側は差の50人についてこう言い逃れできてしまうのだ。「50人は、共通入浴券を使って入ったんです。しかもその50枚はほかの人が買ってしまって今手元にないため、立証できません」

 だから、入浴券の券売機を置くような銭湯は少ない。販売数が正確にカウントできてしまい、脱税できなくなってしまう。いわば「正直者がバカを見る」仕組みだからだ。

 結局、経費も売り上げもドンブリ勘定。両方適当に説明できてしまう上に、事実が絶対わからない仕組みになっている。税務署でさえも見抜くことができず、半ばあきらめモードというのが現状だ。そもそも月に100万円の売り上げもない銭湯に調査の人員を割いていられず、税務調査が入ることなど滅多にないのだ。

 この現状について行政は「共通入浴券は使い捨てにするべき」と浴場組合に忠告しているが、組合側は「現状の入浴券は、偽造防止のためにコストをかけて製造している。これを使い捨てにした場合、その数は何億枚にも達するから、損失は計り知れない。どうしても使い捨てにしろというのであれば、助成金を出せ」と反発している。そして結局、行政側もしぶしぶ認めているような状況だ。

 これが、脱税スキームのカラクリである。このような慣習は戦後間もない頃から当たり前のように行われているようで、銭湯経営者の親から子へと伝承され、悪びれる店主などほとんどいない。インタビューした店主も、このように打ち明ける。

「昔は6割申告が当たり前だった。今でも7〜8割申告が相場だ」
「この業界は経理のあらゆる部分がいい加減だから、どこがいい加減かもわからないレベルだ」
「税理士なんてつけないよ。もしつけてる銭湯があれば、うまく帳尻を合わせる意味で雇ってるのだろう」