同社が昨年12月、今春から国内線に導入するエアバス社の中型旅客機「A330」のお披露目会で、A330が就航する路線で半年間、客室乗務員の制服にミニワンピースを採用すると発表し、賛否両論の議論を巻き起こした。ほとぼりが冷めかけた今年4月1日、今度はA330就航予定の3路線で、客室乗務員がいわゆる「ミニスカ制服」を1日限定で着用すると同社が発表。その姿を撮影しようとメディアが空港に殺到し、大騒ぎとなった。
この騒ぎに困惑しているのが、当のスカイマークだ。「ミニスカ制服」着用の本来の狙いがそれてしまったからだ。同社が導入するA330は全271席がシートピッチ(座席間隔)の広い「グリーンシート」で、エコノミー席はない。同社の通常の制服はパンツとポロシャツで、ミニスカ制服はA330のグリーンシート宣伝が目的。5月31日に就航予定の羽田-福岡線を皮切りに、9月からは羽田-那覇線、15年1月下旬をめどに羽田-札幌線と、今年3月末から新たに割り当てられた羽田発着枠3路線で、A330就航から半年間ずつの限定で着用する。
同社がグリーンシートのモデルにしたのは「クラスJ」。JAL(日本航空)の国内線エコノミークラスで、1000円の割増料金を払うと座れるエコノミー上級席だ。シートピッチと機内の快適度は正比例の関係にあるといわれる。エコノミークラスのシートピッチは31-34インチ(79-87cm)。対してクラスJのシートピッチは38インチ(約96.5㎝)。グリーンシートのシートピッチもこれと同じだ。同社が現在運航中のボーイング社「B737」(177席)や、JALとANA(全日本空輸)が採用しているエコノミークラス席の31インチより広い。
供給過剰といわれる国内幹線で空席が目立つのはエコノミークラス席で、クラスJ以上の座り心地の良い席は満席になることが多い。「大手航空の快適さを半額で」がグリーンシートのキャッチフレーズだった。
しかし、同社より早く「安くて快適」を売りにし、革張りシートや座席の広さを打ち出した中堅航空会社のスターフライヤーは苦戦を強いられている。その原因が認知度の低さとされている。同社関係者は、「一般利用客が飛行機に乗る時、思い浮かぶ名前はJALとANA。スターフライヤーは実際に空港に行ってみて『こんな会社もあるのか』と思ってもらえる程度」と苦笑する。同社の売りは、なんらかのきっかけで実際に乗ってもらわないと、その良さが一般利用客にわかってもらえない。スカイマークは「それなら、一般利用客が乗りたくなるような仕掛けをすればいい」と考え、それが期間限定のミニスカ制服着用の狙いだった。
ところが、ミニスカ制服が狙い通り話題になったものの、肝心のグリーンシートはほとんど話題にならなかった。航空業界関係者の間では、早くも「13年3月の関西国際空港撤退に匹敵する誤算」との声も上がっている。