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フラワー業界、縮小逆手にユニークな成功例続々 他業種進出、斬新な店舗、男性向け…

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「サンジョルディフラワーズ ザ・デコレーター HP」より
 今年6月に放送されたテレビ番組『“ナゼ花を買ったんですか?”花屋の客をガチンコ追跡!』(テレビ東京系)は、花屋に密着し、花を購入した人を追うドキュメンタリー番組。花を購入する人を追っていくと、発表会や定年退職、永遠の別れなど、普段は見ることのできない人間ドラマに立ち会うことができる感動的な番組だった。

 けれども、近年、特に若い人を中心に、誰かに花束を渡すという習慣は少なくなっている。一人当たりの花の年間購入額は減少傾向にあり、市場規模は縮小している。2007年時点での販売額は10年前に比べて1000億円以上減の8081億円にまで縮小した。もはや、消費者はギフトとして花を選ばなくなってしまっているようだ。

 こうした市場の縮小に対して、フラワー業界ではさまざまな取り組みを行っている。業界団体では、バレンタインデーに男性から女性へ花を贈る習慣「フラワーバレンタイン」の浸透を図っているほか、「いい夫婦の日」(11月22日)や、「愛妻の日」(1月31日)など、購買タイミングにおける需要を促進しているが、大成功を収めているとはいいがたい。また、農林水産省でも、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて「いけばな」をはじめとする日本の花文化を世界に発信したり、「花育活動推進方策」を策定し、子供の頃から花に親しむ教育を推進するなど、さまざまな方向からアプローチを行っている。

●下降線をたどる業界で成功している企業

 だが、そんな業界全体の下降基調を逆手に取って成功を収めているフラワーショップは少なくない。

 フラワーボックスを使った斬新なアレンジメントで話題となった「ニコライ・バーグマン・フラワーズ&デザイン」を展開するフルスロットルズは、フラワーショップに併設したカフェや、フラワーデザインを用いたインテリアショップを展開するなど、花を軸にしながら積極的に他の分野に進出。花のある暮らしを身近にしたことにより、ギフト需要だけでなく「自分へのご褒美」として、新たなニーズの開拓に成功している。

 また、首都圏を中心に100店舗弱の「青山フラワーマーケット」を展開するパーク・コーポレーションも、普段使い用のフラワーに特化し、売り上げを伸長。フラワーショップのほかにも、カフェ事業の展開や、オフィス、空港ラウンジなどの空間デザインにまでビジネス領域を拡張している。特に、空間デザイン事業は14年、依頼件数を前年比3倍に伸ばしているのだ。

 両者に共通するのは、店舗で客を待ち受けるだけでなく、積極的に外に出て行くという姿勢だ。もはや、座して待っているだけでは、フラワーショップに客はやってこない時代となってしまった。

 そんな中、ショップのコンセプトから新しいニーズにアプローチを試みているのは、ポジティブドリームパーソンズが展開する「サンジョルディフラワーズ ザ・デコレーター」だ。

 東京・恵比寿や品川、兵庫・神戸、広島、福岡などに店舗を構える同店。しかし、フラワーショップであるにもかかわらず、店舗の中には花が置かれていない。同店では、完全オーダーメイド型のサービスを提供しており、店内に花を置かないことによって、商品ロスのコストを省いている。そして、何よりもユニークなのが同店のターゲットだ。一般的に、フラワーショップの利用客として想定されるのは女性客が中心だが、同店の利用客は7割を男性が占めており、「男性が女性に花を贈る文化を日本に根付かせる」ことを目標に掲げている。

 店内に花がなく、シックなデザインの空間を用意することによって、男性でも入りやすい雰囲気を演出。また、黒を基調としたボックスに花束を入れることによって、「花を持ち歩くのが恥ずかしい」という男性特有の抵抗感を和らげている。さらに、女性に比べて花についての知識が少ない男性たちのために、「デコレーター」と呼ばれるスタッフを配置し、利用客が伝えたい思いをヒアリング。これによって、利用客の理想に近いフラワーデコレーションをアレンジしているほか、思いのこもった花束を利用客の指定した場所やタイミングに直接、花束を作ったデコレーター本人が運ぶというサービスも提供する。花の販売だけでなく、提案から受け渡しまで、花にまつわるすべてのサービスが、同店の提供する価値となるのだ。

 低迷する業界だからこそ、成功を収めるためには斬新なアイデアを生かした大胆な戦略が必要とされる。フラワーショップだけでなく、さまざまな業界でも応用できる好例ではないだろうか。
(文=編集部)