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林總「かみくだいてご説明しますと……」(11月19日)

ボジョレーはなぜ儲かる?低級ワインを世界的ブランドへ転換、驚愕のビジネスモデル

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「ジョルジュ デュブッフ ボジョレー・ヌーヴォー 2014」
「フレッシュさが多彩な芳香を引き立てており、タンニンは繊細で完璧に溶け込み、絹のような舌触り。2014年はボジョレーのためにあったようなヴィンテージ!」

 毎年この時期になるとテレビなど大きく取り上げられるため、ワイン愛好者ではなくとも、多くの人が毎年11月の第3木曜日がボジョレー・ヌーボーの解禁日であることを知っている。冒頭のフレーズは、ボジョレー委員会が発表した今年のボジョレー・ヌーボーに対するテイスティング評価だが、不思議なことに毎年必ずポジティブな言葉が並ぶ。ボジョレー・ヌーボーは確かにフレッシュで飲みやすく、人気があるのはわからないではない。価格帯は数百円台から5000円程度だが、間違いなく生産者は儲かっていると思われる。今回はボジョレー・ヌーボーが儲かる理由を、経営と会計、そして若干のうんちくを織り交ぜて解説したい。

 生産地であるボジョレー地区は仏ブルゴーニュの南端に位置しており、同じブルゴーニュ地方でもピノノワールだけを使うコートドニュイ地区やコートドボーヌ地区とはことなり、使用ブドウ品種は格下の品種とされるガメイ種だ。このボジョレー地区はクリュボジョレー、ボジョレーヴィラージュ、ボジョレーの3つのランクに分かれており、ボジョレー・ヌーボーを生産しているのは、ボジョレーヴィラージュとボジョレー。

 このボジョレー地区に約50年前ひとりの天才が登場し、低級で安いワインを生産していた同地区に奇跡が起きた。醸造家にして稀有の戦略家でもあるジョルジュ・デュブッフがその人物だ。

●取り柄のない新酒を世界的ブランドに押し上げる


 そもそも、ボジョレー・ヌーボーは、かつてはリヨンの居酒屋やビストロでがぶ飲み用として売られており、100年以上前、11月の時期になると酒飲みたちがこのワインを求めてフランスの各地からやってきた。そんな客をあてこんで、まだワインとはいえない未完成品を出荷する悪質業者が横行したため、政府は粗悪品を出荷しないようにと、解禁日を法律で設定した。幾度かの変更を経て現在では11月の第3木曜日となった。

「ヌーボー」とは「新酒」という意味だ。通常、良いワインは熟成のために最低でも1~2年ほど寝かせてから蔵出しする。ところが、ボジョレー・ヌーボーは収穫して3カ月後には世界中の店頭に並び、その年に売り切る。もっと寝かせれば美味しくなるのでは、と思われるかもしれないが、ボジョレーヌーボーの場合、味のピークは年が明ければ過ぎ去ってしまう。デュブッフは、この早く飲める以外になんの取り柄もないこの新酒を世界的ブランドに仕立て上げることに成功したのだが、そこには驚くべき戦略があった。

 まずデュブッフは、早く飲めることを「個性」としてアピールし、リヨンの3ツ星レストランのポール・ボキュースのメニューに入れ、高級品として演出した。そしてラベルのデザインを毎年変えて視覚的にアピールし、生産地にワイン村を開設。さらにアメリカと日本の有力販売業者への売り込みと販売チャンネル・市場の拡大を進めた。