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富士フイルムの大ばくち 巨額赤字企業買収が波紋 「再生医療世界一」へ英断or暴挙?

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富士フイルムホールディングス本社(「Wikipedia」より/Rs1421)
 富士フイルムホールディングス(HD)が、再生医療事業拡大に大きく舵を切った。昨年11月に施行された薬事法の一部改正が、同社の決断を促したともいわれている。

 3月30日、富士フイルムHDはアメリカのセルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI社)を約370億円で買収すると発表した。4月中にTOB(株式公開買い付け)でCDI社の全株を取得し、完全子会社化を目指す。

 CDI社は、世界で初めてヒトES細胞を開発したウィスコンシン大学のジェームス・トムソン教授らが2004年に設立、13年にNASDAQに上場したバイオベンチャーだ。同社は、iPS細胞を大量かつ安定的に製造する技術を強みにしており、大手製薬会社や先端医療研究機関に各種再生医療製品を供給している。創薬支援、細胞治療、幹細胞バンク向けiPS細胞などの開発・製造も行っている。

 一方、富士フイルムHD傘下の富士フイルムは、写真のフィルム技術を応用し、細胞増殖に不可欠な人工たんぱく質「リコンビナントペプチド」を開発済みだ。さらに、昨年末には再生医療製品販売のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)を連結子会社化し、再生医療事業拡大の準備をしてきた。

 CDI社買収を発表した日、富士フイルムHDの古森重隆会長は、記者会見で「CDI社の買収は、再生医療事業拡大に向けて重要なステップだ。当社、J-TEC、CDI社の3社の技術を組み合わせれば、細胞組織や臓器など、さまざまな再生医療に貢献できる。今後は、再生医療事業で世界一のメーカーを目指す」と自信を見せた。

 富士フイルムが開発したリコンビナントペプチドは、iPS細胞が育ちやすい立体的な培養が可能だ。より実際に近い環境を体外に再現できるため、新薬テストの精度が向上する。また、J-TECは細胞培養の高い技術を持ち、国内で唯一、再生医療製品を販売している。そこに、CDI社という、iPS細胞そのものの供給源も確保することになり、富士フイルムHDは、再生医療事業拡大に重要な技術を揃えたことになる。

 それが、「再生医療事業で世界一」の花火を打ち上げた、古森会長の自信の裏付けになっているわけだ。しかし、CDI社は14年度業績で3000万ドル(約36億円)の赤字を抱えている。期待を集める一方で、株式市場関係者の間には不安の声も聞かれる。

遅れている、日本の再生医療製品開発


 3月19~21日に神奈川県横浜市内で開催された「第14回日本再生医療学会総会」。過去最多の約3500人が詰めかけ、医療業界関係者の再生医療への関心の高さをうかがわせた。

 同会の基調講演には、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授が登壇、同研究所が行っている再生医療研究の最新状況が説明された。年内には、同研究所の高橋淳教授らがパーキンソン病治療の臨床研究計画を申請する予定で、ほかに輸血用の血小板の作製、腎不全、筋ジストロフィー、関節疾患の治療などでも、iPS細胞を利用した研究が進んでいるという。

 再生医療は、まだ臨床研究が緒に就いたばかりだ。山中教授のiPS細胞研究で世界の脚光を浴びた日本の再生医療はいつ実用化されるのか、関心を集めている。