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東芝が怯える、損失膨張と経営危機 “条項”発動で借入金一括返済要求の懸念も

文=山口義正/ジャーナリスト
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東芝が怯える、損失膨張と経営危機 “条項”発動で借入金一括返済要求の懸念もの画像1東芝前社長の田中久雄氏
 不正会計問題に揺れている東芝が先月21日、歯切れが悪いながらも記者会見を開いて経営トップらが責任をとったことで、その再建がようやく緒に就く。

 この問題が改めて印象付けたのは、日本の電機産業は収益力や財務内容の傷みが激しいということだ。極端な円高の修正が進んだことで、日本の製造業は息を吹き返したが、やはりその体力はすでに大きく蝕まれていた。特に2008年のリーマン・ショックで自己資本が大きく目減りした企業も多く、東芝の取材をしていると、「他のメーカーも同じことをやっていた」といった話があちこちから聞こえてくるので、単なるコーポレート・ガバナンスや会計上の問題でもなさそうだ。

 東芝が記者会見で明言を避けたポイントは、1500億円の水増し利益を差し引くことによって、バランスシートにどの程度の影響が出るかだ。決算期によっては繰延税金資産の取り崩しを迫られる恐れがあるうえ、米原発プラント大手ウエスチングハウス買収によって生じたのれん代の減損処理にまで影響が及べば、東芝の傷口は広く深くなる。つまり利益水増し分の1500億円どころか、その数倍の影響が出かねず、経営の屋台骨が大きく傾く。

 その場合、連鎖的に問題になるのは、現在の借金をそのままにしていられるかどうかだ。銀行からの借入金や社債の契約に財務制限条項が盛り込まれている場合、その中の純資産額維持条項(純資産額を一定の水準以上に保たなくてはならないという内容)などに抵触する恐れがある。借入金や社債につけられているこうした条項は債権者保護のために厳しい内容になっており、どれか一つの社債が財務制限条項に引っ掛かると、「期限の利益を喪失させた」として他の社債や借入金も返済を求められるクロスデフォルト条項が発動する恐れが浮上するのだ。

 東芝は会見で財務制限条項への抵触を聞かれ、「(金融機関からは)そうした指摘は受けていない」と回答しているが、銀行側も、今回の不正会計が東芝の財務諸表にどのような影響を与えるのかが判明するまでは、条項抵触を指摘できないというのが本当のところではないか。

懸念される“第二のシャープ化”

 銀行や投資家、あるいは日本政府が東芝について懸念しているのは、経営再建がなかなか軌道に乗らないシャープのようになりはしないかという点であろう。安保法案の強行採決で支持率が急低下するなか、東芝の凋落が第二のシャープとして受け止められるようだと、アベノミクスに対する信認が揺らぐ。

 東芝の浮沈と今後のリストラには地方自治体も気を揉んでいるに違いない。東芝には国内だけで三重県や大分県、兵庫県などに18カ所の工場や事業所を抱えているからだ。今後は資産売却による財務リストラと事業ポートフォリオの見直しは避けられず、生産拠点の集約や下請け業者との関係の見直しなど、雇用や地域経済への影響も覚悟しなくてはならない。

“東芝のシャープ化”を避けるために何が必要か、東芝が抱える個々の事業の劣化が始まる前に解決しなければならない難問は山ほどある。
(文=山口義正/ジャーナリスト)

●山口義正
ジャーナリスト。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞記者などを経てフリージャーナリスト。オリンパスの損失隠しをスクープし、12年に雑誌ジャーナリズム大賞受賞。著書に『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)。

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