国内の石油元売り業界は、若者のクルマ離れに加え、自動車の燃費向上でガソリンの需要が先細りするなか、再編へ向けて走りだした。
国内首位のJXホールディングス(HD)と3位の東燃ゼネラル石油は12月3日、経営統合で大筋合意したと発表した。2017年4月の統合に向け、製油所の統廃合を検討する。JXHDと東燃の売上高を単純合算すると約14.3兆円となり、出光興産=昭和シェル石油(約7.6兆円)の2倍近い。給油所数はJXHDのエネオス、東燃のエッソ、モービル、ゼネラルと合わせると約1万4000カ所。国内全体の約4割に達する。売り上げはトヨタ自動車に次いで2番目という、圧倒的な力を持つガリバー企業が誕生する。
両社が統合を目指すのは、政府(経済産業省)が元売り各社に生産削減を求めていることが関係している。需要減と原油安という二重苦が背中を押した。
JXHDは傘下に石油元売りのJX日鉱日石エネルギー、石油・天然ガス開発のJX日鉱日石開発、金属事業のJX日鉱日石金属の3社を持つ。統合比率は16年8月をメドに決めるが、東燃ゼネの株主にJXHD株を割り当て、その上で東燃ゼネとJXエネを合併する。近く統合準備委員会を設置、新しい社名や役員人事などを協議する。
経産省の統計によると、15年度のガソリン、軽油、重油といった石油製品の需要は1.8億キロリットルとなり、00年度に比べて2割以上減る見通しだ。今後、毎年2%ずつ減るという。国内自動車の販売台数が伸び悩み、燃費に優れた車が人気を集め、ガソリンを使わない電気自動車(EV)の普及が進むためだ。
その結果、ガソリンスタンド(GS)の数は激減した。1990年代末に5万6000店を超えていたGSはいまや3万4000店。3万店を割るのは時間の問題とされる。「GS過疎地」といった言葉も生まれた。元売り各社にとっては、規模の拡大を求めて合従連衡に動かざるを得ない条件が重なった。
引き金は、出光と昭シェルの合併
JXHDが東燃に統合提案したきっかけは、昨年末に表面化した業界2位の出光興産と5位の昭和シェル石油の統合交渉だった。出光と昭シェルは16年10月以降に対等合併することで基本合意した。両社の売上高は約7.6兆円となり、首位のJXHD(約10.9兆円)に迫る。
出光が昭シェル株式の約33%を英オランダ石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルから16年上半期に約1700億円で取得し、昭シェルと合併する。「対等」をうたっているが、実態は出光による昭シェルの吸収合併だ。
約7000カ所のガソリンスタンドの看板は、利用者が混乱しないように当面併用する。石油会社の統合・合併の最大の難関は、ブランド名の統一である。GSはライバル会社のブランドに変更することに抵抗が強い。両社は新しいブランドを検討していくことになるとみられる。