サッカー、FIFAワールドカップ(W杯)ブラジル大会で、日本はC組最下位で1次リーグ敗退となった。日本サッカー史上最強といわれた日本代表の予想外の敗退に、サッカーファンの誰もが落胆したが、落胆したのはサッカーファンだけではない。W杯特需を見込んでいたビジネス界も、日本代表敗退に深く落胆した。家電や外食、関連グッズの消費で3000~5000億円の経済効果を期待していたからだ。
筆者の自宅近くにあるコンビニエンスストアチェーン、ファミリーマートは、W杯が始まる前から店員が日本代表のレプリカユニフォームを着て接客していたが、敗退が決まった直後に着用をやめ、日本代表応援キャンペーンも終了した。青に染まった応援キャンペーンが、なんとも寂しく感じられたものである。
家電量販店はフルハイビジョンの4倍の解像度を持つ4Kテレビの販売に力を入れ、W杯特需を狙った。ビックカメラは6月上旬のテレビの売上高が前年同月比で5割増えたそうだが、日本敗退が決まった6月下旬は予想を下回ってしまったようだ。
しかし、日本人は忘れるのも早い。良く言えば「切り替えが早い」というべきか。日本代表敗退で落ち込んでいたかと思えば、すぐに日常生活へと戻っていった。
●景気はまだ悪い?
W杯特需は期待外れに終わってしまったが、現在の日本の景気はどうなのだろうか。内閣府から6月の「景気ウォッチャー調査」の結果が発表された。この調査は、主に民間企業の景気判断を数値化したもので、景気の「気分」が数字でわかるデータであり、経済分析でも重要な指標である。以下に内閣府のコメントをそのまま引用してみよう。
「6月の現状判断DIは、前月比2.6ポイント上昇の47.7となり、2カ月連続で上昇した。(中略)6月の先行き判断DIは、前月比0.5ポイント低下の53.3となり、依然高水準ながら3カ月ぶりに低下した。(中略)景気は、緩やかな回復基調が続いており、消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動減の影響も薄れつつある」
多くのマスコミが、この内閣府のコメントを引用し、「消費税引き上げの影響が薄れ、景気が回復しつつある」という報道だった。しかし指標をよく読めばわかるが、景気の現状判断DIはいまだに50、つまり良くも悪くもないというプラマイゼロの水準よりも低く、多くの企業が「景気はまだ悪い」と実感しているのだ。また、景気の先行きに関しても3カ月ぶりに低下していることも考えれば、「回復基調が続いている」という判断は甘いといわざるを得ない。
また、総務省が6月27日に発表した5月の家計調査では、1世帯当たりの消費支出(2人以上世帯)は27万1411円で、物価変動を除いた実質ベースで前年同月比8.0%マイナスとなった。これは東日本大震災が発生した2011年3月(同8.2%減)以来の落ち込みとのことだが、経済学者の高橋洋一氏によれば過去33年でワースト2位の悪い数字で、大震災直後を“異常値”と見れば今年5月の消費活動は実質過去最悪の数字となるという。高橋氏は、このままいけば14年度はマイナス成長になりかねないと警告する。
数字が示す実態より政府が発表する景気予測が楽観的なのは、来年の消費税増税(10%)への地ならしといわざるを得ない。今年の消費増税によって景気にブレーキがかかったことが明らかになれば、来年のさらなる増税が実施できにくくなるからだ。