ユニコーンジャーナル > ユニコーンアイニュース > AIが幹事、驚愕の近未来的な花見

AIが花見を取り仕切る…若手社員の労力を軽減?エンジニアも驚愕の進化

2025.04.02 2025.04.04 11:36 ユニコーンアイ

AIが花見を取り仕切る…若手社員の労力を軽減?エンジニアも驚愕の進化の画像1

「テクノロジーの発明により、人の可能性を拡張する」とのビジョンを掲げ、Saasプロダクトの研究、開発、販売、カスタマーサービスまでを一貫して手がける株式会社Helpfeel(京都府京都市、代表取締役CEO:洛西一周)は4月2日、AIエージェントの研究開発の一環として、AIがプロデュースする花見を開催した。

 AIが花見の幹事を行うと聞いて、実際にどの程度のことができるのかと疑問に思う方も多いのではないだろうか。UNICORN JOURNAL編集部はHelpfeel社の花見を取材させてもらいつつ、同社代表取締役CEO・洛西一周氏および開発担当のAIエキスパートエンジニア・寺本大輝氏に話を聞いた。

 花見といえば、多くの企業では若手社員が幹事に任命され、場所取りから参加人数の確認、料理や飲み物の手配、当日の余興、時間管理、費用徴収や支払いなど多岐にわたるタスクをこなさなければならない。そのうえ、不備があれば容赦なく先輩や上司から叱責されることもあり、理不尽極まりない。だが、その一部をAIが担ってくれるのであれば、負担は削減される。幹事を押し付けられがちな若手社員側だけでなく、労働力不足やパワハラリスクを解消する意味で、会社側にとってもメリットがあるといえる。

AIが幹事、“近未来の花見”

 当初、公園にて花見を開催する予定だったが、雨に見舞われたことから同社東京オフィスにおいて“インドア花見”となった。

 米AIスタートアップCognition社が開発した、世界初の完全自律型AIソフトウェア・エンジニアである「Devin(デヴィン)」を活用し、AIが花見の幹事を務めるというパフォーマンスを披露。

 まずはDevinに「一番近いお店はどこ?」「お花見に合う料理を提案して」「10人分くらい注文して」など、これほど大雑把な依頼の仕方でよいのか、と疑問に感じるほど気軽にオーダー。すると、15分以内の距離にある飲食店をピックアップし、おにぎり・サンドイッチ・唐揚げ・サラダなどを提案。決済を了承すると、Devinは注文を完了させた。

AIが花見を取り仕切る…若手社員の労力を軽減?エンジニアも驚愕の進化の画像2

 注文完了後に、今回の料理手配を自己採点するように指示すると、「85点」と評価。「もっと早く進められた」と反省しつつも、「お花見には伝統的な和食(おにぎり)と、オフィスでの取り分けやすさを考慮してサンドイッチを組み合わせました」と回答し、周囲をうならせた。

AIが花見を取り仕切る…若手社員の労力を軽減?エンジニアも驚愕の進化の画像3

 数十分後、料理が到着するとDevinが乾杯の発声を行い、オリジナルクイズを提供するなど、幹事としての務めをこなした。もちろん、場所取りなどはできないが、全体的な仕切りなどは十分に合格点といえるだろう。

 AIの進化は驚異的な速度で、AI専門のエンジニアが「3年後くらいに実現できそう」と考えていたことが1年後に完成している、というほど日進月歩だ。現時点で人間が行うことが当たり前と思われるような仕事でも、数年後にはAIに置き換わっている可能性も大いにあり得る。

 だが、課題もないわけではない。寺本氏は「AIは非常に人間的な言い訳や嘘をつくことがある。今後もそのような嘘は増えると考えられるが、ビジネスでは誠実さが求められる。AIの進化とサービス提供者の工夫で解決を図る必要がある」と提言する。

Helpfeelが見据える未来像

 確かに、AIが飛躍的に進化していることを体感させられるイベントではあったが、このイベントを通して、Helpfeel社は何を伝えたかったのか。

 同社は、「本イベントを通じ、AIがイベント運営の一部を担い、社員の業務負担を軽減する未来の可能性を体感しました。当社は今後も、AIエージェントをはじめとするAI技術の研究開発を通じ、さらなる業務の効率化を推進してまいります」と語る。

 また、今回利用したのは他社製のAIエージェントであって、Helpfeel社の製品ではない。今後、顧客に対してDevinを導入するよう提言するのか、Devinをベースに製品開発を行うのか尋ねた。

「現時点で利用可能な各社のAIサービスを利用しているが、突出して優れているのがDevin。クラウド環境上ですべて動いているので、手元で操作する必要がない。それでいて、とても複雑な作業をこなすことができるのが特徴。それでも、一般消費者が使えるものではないので、身近に使いやすいものを作るために、参考資料として使い倒しているという状況」(寺本氏)

 また、洛西氏は米シリコンバレーで創業しているが、スタートアップの環境は日本とどう違うのか尋ねた。

「もっとも違うのは、流れているベンチャーマネーです。100倍どころではなく大きなお金が投資される環境がシリコンバレーにはあります。それによって研究開発にかけられる費用が変わってきます」(洛西氏)

 そのシリコンバレーから日本に挑戦の場を移し、洛西氏は日本発のグローバル企業を目指すとビジョンを語る。さらに、AIエージェントを使って、どんな社会を実現したいのかを尋ねると、「AIによって人を助けるのがビジョン」と言う。

 主にウェブサイトに向けた顧客設定の領域がソリューション提供の場と説明し、「エンドユーザーが企業のヘルプサイト上で解決できず、サポートに電話をかけたり、あきらめてサービスから離脱してしまうという現象を食い止めたい」と述べる。いわば、企業とエンドユーザーの“橋渡し”をすることで、情報格差、知識格差を埋めていくことが同社の目標であるという。

 Helpfeelは2025年中のリリースを目指し、AIエージェントの研究開発を進めている。開発中のAIエージェントは、目的を指示するだけで、複雑なタスクを分解して分析・考察までを自動化するという。

 生成AIの登場により、あらゆる分野で業務の効率化が進んでいる。だが、決して人間の仕事をAIが奪うわけではない。AIを活用することで人間の仕事の幅が広がるように持っていくことが重要なのである。

(構成=UNICORN JOURNAL編集部)