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話題の本『私、社長ではなくなりました。』安田佳生氏インタビュー

高額給与は社員のためにならず...倒産した元人気企業社長の告白

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『私、社長ではなくなりました。
― ワイキューブとの7435日』
(安田佳生/プレジデント社)
「優秀な人材さえ集まれば、自然に売上は伸びるし、会社も大きくなるだろうと思っていた」
「ワイキューブの顧客であることにステータスを感じてもらえるよう、受付嬢は美人にこだわった」

 今、一冊の異色のビジネス書が話題になっている。その本は、『私、社長ではなくなりました。―ワイキューブとの7435日』(プレジデント社/安田佳生)。安田氏といえば、2002年には就職人気企業ランキングで、名だたる大手企業と並んで40位に入った採用コンサルティング会社・ワイキューブの創業者・代表取締役で、00年代に『千円札は拾うな。』(サンマーク出版/06年)、『嘘つきは社長のはじまり。』(同/08年)など、自己啓発、ビジネス分野の書籍でもヒットを飛ばしてきた人物だ。

 ワイキューブは11年3月30日、負債総額40億円で民事再生法の適用を申請し、ニュースにもなったが、当時の経営の内情と、多額の資金を投入した同社のブランド戦略をこの本のなかで赤裸々につづっているのだ。

「優秀な人材を集めるには、学生がこんなところで働きたいと思うような高層ビルにオフィスを構える必要がある。セミナーが開ける大会議室がなくてはならないし、熱帯魚が泳ぐ水槽もほしい」

 リクルートで働いていた経験もある安田氏は、優秀な人材を得るために多額の資金投入も惜しまない、同社の姿勢を真似ようとする。「就職人気企業ランキングは学生にとってバイブルのようなものだ。ランキング上位は大企業ばかりで、中小企業はひとつもなかった。だが逆に、そのなかにワイキューブのような中小企業の名前があれば、間違いなく注目される。採用コンサルティング会社としての知名度を、顧客に印象づけることもできるはずだ」と、同ランキングトップを目指し、「投入した採用費用は多い年で1億円以上、間接費用も含めれば累計3億円は下らなかった」という。

 また、2社のPR会社と契約し、それぞれ数千万円を支払い、メディア対応のアドバイスも受けるようになった。市ヶ谷のオフィスには、1階フロアに社員の福利厚生のためのカフェスペースやワインセラーを設けた。社員をオシャレにするための自社ブランド「Y-style」まで立ち上げ、「3年間で社員の平均年収を1000万円にする」「入社2年目以降の社員であれば、業績にかかわらず新幹線のグリーン車に乗ることができる」という社員のモティベーションを上げるブランド戦略を打ち出した。

 たしかに魅力的な制度ばかりで、一気に学生たちにとって憧れの会社の一社となる。こうして優秀な人材は採用できるようになったが、利益が追いつかない。実は当時、給料はすべて銀行からの借入金でまかなっていたのだ。気がつけば借金の総額は、10社超から40億円にものぼるものとなっていた。

 ワイキューブの年間売上は最大で40数億円。人材業界はすでに飽和状態。08年にはリーマンショックにも襲われて、同社は東日本大震災後に倒産を決め、安田氏も自己破産を決意する。この『私、社長では〜』は、これまで成功のブランド戦略を謳ってきた安田氏にとって懺悔の書であり、皮肉に満ちたビジネス書ともいえるものだ。今回、渦中の安田氏に話を聞いた。