両社の雌雄を決するのはベスト電器の行方だ。
ビックカメラはベスト電器の株式を15%保有し、持分法適用関連会社としている。
ところが、去る7月にヤマダ電機がベスト電器株の7%取得を発表し、同時に51%を取得して子会社化する計画も発表した。その後、ベスト電器がビックカメラに提携解消を申し入れたことを発表したため、まるでヤマダ電機が業界を制覇するかのような報道がなされている。
ヤマダに立ちはだかる壁
しかし、現実はそう単純ではないようだ。ヤマダ電機の思惑に立ち向かう大きな壁が存在しているとの声が聞こえてきた。ある家電業界関係者が解説する。
「ヤマダ電機のベスト電器株取得は、ビックカメラ創業者で現相談役の新井隆二氏(9月1日付で会長に復帰)には寝耳に水で、新井氏は激怒しているらしい。新井氏にベスト電器株を売却する考えはないようです。ひとまず静観しているとも聞いていますが、新井氏が株主権の侵害を通告する可能性もあります。ヤマダ電機によるベスト電器子会社化には、ベスト電器の株主総会の議決が必要になる場合もあります」
また、公正取引委員会の判断も焦点となる。公取委は、ヤマダ電機によるベスト電器の株式取得について、ヤマダ電機から株式取得に関する計画届出書の提出を受け、株式取得が競争に与える影響について審査を行ってきた。ただ、より詳細な審査が必要であると判断して、ヤマダ電機に報告を求めている。そして、この株式取得について第三者からの意見書を8月13日まで受けつけた。
さらに、この業界関係者は、ビッグカメラと財務省とのパイプに注目しているという。
「ビックカメラは財務大臣を経験した大物政治家とのパイプが太いし、取締役副会長の妹尾喜三郎氏は、元財務省大臣官房会計課長です。ビックカメラが有楽町に出店したときには、大物政治家が同社を有楽町店の家主である読売不動産に仲介したとも噂されています。さらに、元財務事務次官が読売新聞グループ本社の監査役に就任していることから、ビックカメラ―財務省―読売新聞というラインも見えてきます」
着地点のカギは、中国向けネット通販企業をめぐる株式交換?
こうした背景が、ベスト電器をめぐるヤマダ電機とビックカメラの争奪戦に、どんな影響を与えるのだろうか?
先の関係者は、「着地点はビックカメラ所有のベスト電器株15%と、ベスト電器所有のストリーム株30%の交換でしょうか」と話す。
「ストリーム」とは、東証マザーズ上場のネット通販企業で、ベスト電器が30%を出資して3人の役員派遣と商品の供給を行っている。一方、ビックカメラの新井相談役はストリーム株3%を保有する大株主でもある。