(「ヤマダモール」HPより)
都内で記者会見したヤマダの山田昇会長は、買収の狙いについて、「地域のシェアにこだわる。ベストと組めば、九州でかなりのシェアを維持できる」と説明した。
これまでM&A(合併・買収)を仕掛けて規模を拡大してきたヤマダだが今回はベスト救済の色彩が濃い。1990年代後半まで業界首位だったベストも今や中堅に転落。13年2月期の第1四半期(12年3~5月)連結決算は、売上高が前年同期より29.3%減の500億円となり、700万円の営業赤字に転落した。
ベストが独立路線を断念してヤマダの傘下に入ったのは、銀行の圧力によるところが大きかった。ベストのメインバンク、西日本シティ銀行はベストに体力が残っているうちに身売りさせて、資金の回収を図ることにした。
ヤマダとベストは過去に因縁浅からぬ関係にあった。07年にヤマダがベスト株式を7%まで買い提携を迫ったが、ベスト側はこれを拒否。ビックカメラ(東京都豊島区)と資本・業務提携して、ビックを買収防衛のホワイトナイト(白馬の騎士)とした。しかし、具体的な提携はほとんど進まなかった。「かつてナンバーワンだったベストのプライドが邪魔をした」。関係者の見方はそう一致する。
ビックは今年6月、コジマ(宇都宮市)を買収して子会社にした。取り残されたベストは、銀行の強硬な姿勢に背中を押されて、結局ヤマダの軍門に下ったのだ。ヤマダの山田昇会長は「来る者は拒まず」と王者の貫禄を見せて受け入れた。
ヤマダ側のお家事情もある。「売上高3兆円」を目標に掲げるヤマダの12年3月期の連結売上高は前期比15%減の1兆8354億円。都心制覇と意気込んで殴り込んだ“新宿戦争”で苦戦し、太陽光発電と住宅を組み合わせた「スマートハウス」は、まだまだ立ち上げ段階。13年同期の売上高を、同0.5%減の1兆8270億円と見込んでいる。2兆円まで回復させるためにベスト(13年2月期の連結売り上げは2383億円の見込み)を買って帳尻を合わせることにしたわけだ。