巨額の投資損失、不正経理発覚のエドウイン、救うのはトヨタ?
証券投資に絡む損失は200億円超とみられており、「デリバティブ取引(簿外取引)による投資との見方もあり、損失額はさらに膨らむ可能性が高い」(大手信用情報機関)という。一方、取引銀行は、この事実を知らされていなかった。「エドウインの純資産は298億円しかなく、損失が膨らめば経営危機に陥る可能性も捨てきれない」(同)と危惧されている。
エドウインの社名は、「江戸に勝つ」という意味から命名された。提供するジーンズは、自社ブランドのエドウインはじめ、リー、ラングラー、カーハート、リベルト、サムシング、フィオルッチ、アメリカニーノなど多種にわたり、その競争力は、「団塊世代では、知らない人はいない有名企業。ジーンズの生地は大変良質で、他のジーンズメーカーにも提供しているほど」(関係者)と言う。
実際、他の大手ジーンズメーカーが、ユニクロなどの安価なジーンズにシェアを奪われ、赤字を余儀なくされる中にあって、350億円前後の売上高を誇り、2億6213万円の純利益(ともに2012年1月20日終了期)を計上する優良企業だ。
証券投資の世界では有名
その一方で、エドウインは、証券投資の世界ではよく知られる存在だったようだ。本業がしっかりしていることで、余資運用にも積極的であったと指摘される。しかし、実態は巨額な損失と、それを隠すために長年にわたり不正経理が行われていたことに金融関係者は驚きを隠さない。
エドウインは問題発覚後、内部調査を進めるとともに、弁護士事務所にも調査を依頼し、全容解明に努めているが、「いまのところ、損失がどこまで拡大するかわらない状態」(大手信用情報機関)という。
損失は08年のリーマンショックを契機に発生していることから、株式や債券、証券化商品などの証券投資によるものとの見方がある一方、ジーンズメーカーで、中国などから繊維を輸入するためドル調達のニーズがあり、為替デリバティブ取引の可能性も指摘されている。
この場合、金融機関の勧めで為替デリバティブの契約を結び、急激な円高で差損が生じたケースでは、金融ADR(裁判外紛争解決)に持ち込むことで損失の一部を回収できる道も残されている。しかし、損失額が少なくとも200億円を超え、過小資本に陥ることは避けられないだろう。
簡単には倒産しないという見方が有力
だが、エドウインはそう簡単には倒産しないとの見方が有力だ。関係者によると、エドウインのメイン取引先は「豊田通商」で、長年の信頼関係で結ばれているという。その親密さは、「銀行も手出しができない状態で、銀行に詳細な決算書さえ見せていなかったようだ」と、先の大手信用情報機関は語る。銀行はトヨタグループの信用を担保に、エドウインに融資していたようなものといっていい。
しかし、今回の巨額な投資損失が明らかになり、銀行は不正経理の事実を知らされていなかっただけに、対応に苦慮している。
ある金融筋は、次のように語る。
「本業の部分には問題がなく、あくまで投資損失という一過性の問題で窮地に陥っていることから、取引銀行の支援を惜しまないだろう。同じように過去の投資損失を隠すために粉飾に手を染めたオリンパスと、まったく同じ構図だ」
しかし、「投資損失がどこまで広がるのか、まだ底が見えないのが不安材料だ」(大手信用情報機関)との見方もあり、予断を許さない。「もし債務超過に転落した場合、トヨタグループが資本を提供するホワイトナイトとして登場するのではないか」(金融筋)と囁かれている。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)