経営者がいくら払っても欲しい、今、一番高く売れる人材とは?
ゴールドマン・サックス、ベイン&カンパニーなどの複数の外資系金融機関やコンサルティング会社を経て、ライブドア時代にはあのニッポン放送買収を担当し、ライブドア証券副社長に就任。現在は、経営共創基盤(IGPI)でパートナー/マネージングディレクターとして企業の事業開発、危機管理、M&Aアドバイザリーに従事するのが、塩野誠氏である。そんな塩野氏が、ビジネスのインフォーメーション(情報)をインサイト(洞察)に変えるプロの視点を提供する。
今、高く売れる人材、高給な人材とはどんな人か?
ここでは業界特性によりうっかり給与が高いというケース、例えば外資系金融機関のフロントなんかは除いて考えます。私が企業のコンサルティングを行っている中で、経営者や経営企画部、人事部のみなさんが「こんな人材が欲しいなー」と言うニーズから感じたことをお話しします。
海外での資本・事業提携は、いつだって大変
今さら感でいっぱいですが、日本でも会社の規模にかかわらず、海外、特に最近では東南アジアの成長著しい国々の会社との取引は珍しくはありません。日系企業、中でもメーカーは製品をつくるために、世界中から部品や原料を集めていますし、海外に自社工場や販売拠点を持っています。最近の注目すべき点は、今までは日本からのお金が新興国に流れていましたが、力を蓄えた新興国の企業が直接日本企業へ投資するのを加速していることです。
以前から日本の事業会社は、投資ファンドなどとは違い、まずはビジネスありきで、新興国の企業と部品供給の契約の締結を行ったり、現地の販売会社と代理店契約を行ったりした上で、ビジネスに必要であれば現地企業にお金を出すこと、つまり投資も行ってきました。よくあるのが現地企業とのジョイントベンチャー(JV)の設立です。
ビジネスの現場で海外企業とJVの設立をやったことがある方はよくわかると思いますが、その金額規模にかかわらず、JVの設立はいつだって大変です。
例えば、メーカーで現地の製造販売会社を設立する際には、
「相手側企業との、原材料の購買の分担はどうする?」
「収益分配はどうする? なんらか瑕疵(欠陥)があったらどうする?」
と、リスク・リターンの設計を行わなければいけません。設備投資に必要なお金の調達や儲かったお金の分配スキームの設計をするにも、ファイナンスの知識が必要です。事業とファイナンスの全体感を持って、リスク・リターンの「落としどころ」をJVの担当者はつくり出すことが要求されます。
もちろんこうしたJVの内容は、口頭で相手に「よろしくね!」というわけにはいかないので、現地の文化や規制(お上のノリや気持ち)を鑑みた上で、契約書に落とし込んでいかなければなりません。契約書作成開始時の「準拠法はどっちでやるの?」「裁判管轄はどこ?」でさえハードな交渉になります。実際に合意したことを契約書に落とし込んでいくには、交渉相手に強く出られても「ほう、それが何ですか?」と言い返せる鈍感力と法的なセンスが要求されます。
圧倒的に不足する人材とは?