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白川・日銀総裁が15年ぶりに途中で退任する時代背景

政府に反抗できない日銀 白川総裁は任期途中で逃げ出したのか?

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政府に反抗できない日銀 白川総裁は任期途中で逃げ出したのか?の画像1日本銀行本店(「wikipedia」より)
 日銀総裁候補の面々が、円相場の適正水準とやらを軽々に口にするのはいかがなものか。

 2月14日の午前には岩田一政・日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)が講演で「1ドル90~100円」との見方を示した。この発言が伝わると、対ドル円相場は30銭ほど円安・ドル高の方向に振れた。午後、日銀の政策決定会合の結果が公表された際には20銭しか変動しなかった。レームダックの白川方明・日銀総裁より岩田氏の発言の方が影響力が大きいことを、マーケットが如実に示したわけだ。岩田氏のような向こう受けを狙う人が日銀総裁になったら、どうなるのか。

 モスクワで開かれた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は2月16日、共同声明を採択し閉幕した。市場の関心は安倍政権の経済政策アベノミクスで急激に進む円安を許容するのか。それとも円安に歯止めをかけるような、日本を名指しした批判になるのかに集まった。声明は、厳密にいえば、どちらでもなかった。「為替レートは市場で決定されるべき」で「(為替変動を政府は)目標にしない」。つまり、市場が決める円安なら容認するが通貨安への政策的誘導は許さないということで落着した。

 次の日銀総裁候補に名前が挙がる岩田氏らは、日銀が円を売って外国債券を買う、強力な円安誘導を提唱しているが、こうした円安頼みの成長は国際的な批判を浴びる恐れが高まったことになる。G20の議論の行方が、次の日銀総裁の人選に影響を及ぼすことは避けられないだろう。

 白川総裁は2月14日の記者会見で後任総裁に求められる人間像を問われ、「バランスの優れた人が望ましい」と語った。具体的には(1)金融政策以外の決済システムの運行など日銀の幅広い仕事について十分な理解と知識がある。(2)意見や立場の異なる人にも耳を傾ける謙虚さ。(3)常にグローバルな視点を意識して判断、行動する――の3つの条件を挙げた。「私が具体的にコメントするのは不適当」と述べ、一般論として後任総裁に望ましい人物像を語った。一般論なんかいらない。誰が不適任と白川総裁が考えているかを知りたいのだ。

 白川さん、あなたはバランスの優れた総裁だったのですか? グローバルな視点を強く意識しているのなら、強引な安倍首相の政策運営に「ノー」と言うべきなのではないのか。G20の共同声明は、まさに輸出が有利になるように、自国通貨を競って安くする“通貨安競争”にクギを刺す内容となっているではないか。海外のメディアは“通貨戦争”とまで書いている。

 2011年、米ワシントンポスト紙による「経済危機を避けようと努力する世界の指導者8人」に、白川総裁は日本でただ1人選ばれた。

 是非とも歴史に残る日銀総裁になってほしいと願うばかりであるが、白川総裁にとって記者会見の場はあと1回(か2回)に限られている。はっきりアベノミクスに反抗(&反攻)の姿勢を示したらどうなのか。本来、日銀総裁の候補でなかった白川氏が総裁になったツケが、今になって回ってきている、との厳しい見方がある。これをご本人の言葉で跳ね返したらどうなのか。

 白川総裁の就任も異例なら、辞任もまた異例だった。2008年の総裁就任会見で「このたび、まったく図らずも総裁の任命を受けることになりました」と話していたのを思い出す。今度は、首相官邸で2月5日に開かれた経済財政諮問会議の終了後、会議に出席していた白川総裁は記者団に向かって任期途中で辞任する意向をいきなり表明した。

 2月5日の22時から日銀本店内で会見を行った白川総裁は、辞任について「総裁、副総裁2人の新体制が同時にスタートできるようにするため」と説明した。現在の副総裁2人の任期満了は3月19日。同時に白川総裁も辞任するという理屈である。

 会見では「政府からの辞任の圧力があったのか?」「金融緩和に対する抗議の辞任か?」といった質問が出たが、白川総裁は「まったくそういうことはない」と否定した。

 しかし、額面通り受け取る市場関係者は皆無だった。今でもいない。官邸対日銀のバトルの結果との見方がほとんどだ。白川氏が前倒し辞任を明らかにした2月5日だけで、円はドルに対して1円以上も、海外で円安に振れた。後任の総裁の手で積極的な金融緩和が行われるという観測が流れ、これが円安になった最大の理由だ。

 デフレ脱却を大目標に掲げる安倍晋三首相は「2%のインフレターゲット(物価上昇目標)」を看板政策に掲げたが、当初、それに真っ向から反対したのが日銀だった。官邸による強烈なプレッシャーで日銀は折れた。それでも政治が職権を超えた横車を押してきたことに、日銀は今でも激しく怒っている。

BusinessJournal編集部

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