(「麻生HP」より)
九州・山口地区の地方経済団体である九州経済連合会の次の会長に、麻生太郎氏の弟で麻生グループ代表の麻生泰氏(66)が就く。2009年から会長の椅子にあった松尾新吾・九州電力相談役(74)は退任する。6月の総会で正式に決定する。
地方の財界のまとめ役である経済団体の会長職は、電力会社の出身者が就くことが通例となっている。現在も8つの経済連合会の会長は、すべて電力会社の会長や相談役だ。九経連の会長職は61年の設立以降、歴代会長7人はいずれも九電の会長経験者が務めてきた。九電出身者以外では初となる。まさに異例中の異例といえるサプライズ人事である。
松尾氏は九電会長時代の11年に起きた玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼動をめぐる「やらせメール」問題で、12年に会長を辞任して相談役に退いた。だが、九経連の会長職は「後任が見つからない」という理由で続投してきた。
原発の依存が高かった九電は原発を動かせなかったため業績が悪化。この春、33年ぶりに電気料金の値上げに踏み切った。九経連会長のポストを担う企業は金銭的、人的負担が大きい。それでも、後任会長に九電出身者を充てることは消費者の理解を得られないと判断し、九電以外から後任を出す方向で人選を進めてきた。
「九経連会長は九電の指定席ではない」ーー松尾氏は折に触れて、そう強調してきた。
しかし、九州財界の次のトップ選びは難航した。最有力候補は九州全域で事業展開するJR九州会長で、九州経済同友会代表委員&福岡経済同友会の代表幹事の石原進氏だったが、「上場しておらず、国の基金に頼った経営をしている」との理由で本人が固辞。西日本鉄道、福岡銀行の地場大手企業の首脳は、いずれも就任を断った。安川電機やTOTOなどの大手メーカーは関心すら示さなかったという。
最後に松尾氏が頼ったのが「麻生ブラント」だった。福岡県飯塚市に本社を置く麻生グループは、元首相で現・副総理兼財務相の麻生太郎氏の実家である。
「松尾氏は11年の福岡県知事選で、麻生太郎氏が推す小川洋氏の支持で経済界をまとめた。松尾氏と麻生氏は深い縁がある。トップ同士の話し合いで決まったということでしょう」(地元財界人)
引き受ける条件は「カネとヒトは九電がもつ」だったろう。これまで会長の出身企業は、カネだけでなくヒトも出してきた。政界・官界・経済界に根回しするために手足となって動く人間が必要だからだ。それほど財界活動の負担は大きい。大企業といえども会長職に尻込みするのはカネがかかり、人を出す破目になり、「何もミスをしなくて当たり前」といわれるほど役職に対する期待も高いからだ。結局、地方経済団体のトップは公共性が高く、地域のガリバー企業で各界に太いパイプをもつ電力会社の指定席となった。
麻生グループの経営規模は、九電のような大企業でなく中小企業だ。カネもヒトも出す余裕はない。九電が担ぐ御輿(みこし)に乗ったというのが、麻生泰・九経連会長誕生の舞台裏だ。人選が難航して窮地に追い込まれた松尾会長に「ボルサリーノ麻生太郎」氏が助け船を出したと、地元経済界では受け止めている。
●炭鉱で財を成した麻生グループ
それでは、麻生グループとは、どんな企業なのか。