キャピタルメディカルの社外取締役に麻生巌氏が06年3月に就任している。2010年に麻生泰氏(父親)の後を継いで麻生の社長になっている。麻生グループの次期、総帥となる人物だ。
麻生太郎副総理にとって、久保村広子被告との関係は、絶対に触れてほしくない恥部なのかもしれない。
●詐欺事件の概要
ヤマト樹脂光学は61年創業。66年に法人化したコンタクトレンズの製造・販売会社。当初は大学病院や眼科医など医療機関向けに、医療用コンタクトレンズの製造卸を行っていたが、近年は、大手コンタクトレンズ販売チェーン向けに同レンズのOEM生産(相手先ブランドの委託生産)が主力になっていた。全国の大学病院内に売店を開設、病室のテレビのプリペイドカード事業にも乗り出した。カードを買えばテレビが見られる。08年3月期には売上高680億4893万円をあげていた。しかし、会社の闇が一気に噴出する。08年7月、コンタクトレンズの使用期限の偽装問題が発覚。翌8月10日に東京地裁に自己破産を申請し、同11日に破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は227億円。
ここからひたつの事件に発展する、ひとつは汚職事件。同8月下旬、国立身体障害者リハビリテーションセンター病院の医療機器選定を巡って元部長に賄賂を渡したとして、久保村容疑者が警視庁捜査2課に贈賄容疑で逮捕された。さらに防衛医科大病院の元眼科部長にも同様の不正を行っていたとして再逮捕。結局、一連の汚職事件で久保村被告は09年3月、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。
医療機器や製薬会社の担当者が受注先の医師を高級料亭などで接待し、現金や商品券をこっそり渡すのは日常化していた。女傑といわれた久保村社長は自らが接待に当った。大学病院内の売店は、それ以前は各種の天下り団体の利権だったが、ヤマト社が次々と売店の権利を得ることができたのは、久保村社長が大学病院の中枢に食い込んでいったからだ。「スゴ腕の女社長」として知られた存在となった。
汚職事件で一件落着と思いきや、そうではなかった。もうひとつの大きな事件が発覚した。医療機器の取引をでっち上げ、メガバンクを含む8つの金融機関から1000億円を超える巨額の融資を引き出していたのだ。
2月1日、警視庁捜査2課は久保村容疑者を、りそな銀行から40億円を騙し取った容疑で逮捕した。ヤマト社は03年ごろから10億円以上の不良債権を抱えるようになり、資金繰りが悪化。架空の売掛金を担保に借り入れた金を他の金融機関への返済に充てる自転車操業を繰り返していた。03年12月から08年8月の破産申し立てまでの間に合計1140億円の融資を受けていた。
ババを引いたのが初めて取引した、りそな銀行だった。元銀行員のブローカーが、りそな銀行に「いい融資先がある」とヤマト社を紹介したのがきっかけだった。りそな銀行は08年3月に、防衛医科大病院などの売掛金を担保に40億円を融資した。その際、久保村容疑者は「借金をしていることが取引先にわかると会社の信用が落ちる」と言って、大学病院や学校法人側に、この借り入れの事実を通知しないよう要請していた。