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王者新潟産コシヒカリを揺るがす、「おいしい米」戦争の舞台裏〜攻勢かける北海道と九州

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王者新潟産コシヒカリを揺るがす、「おいしい米」戦争の舞台裏〜攻勢かける北海道と九州の画像1「Wikipedia」より
「おいしい」の代名詞として知られる新潟県産、なかんずく魚沼産「コシヒカリ」がその牙城を守りきれるかどうか、2月はじめ(例年8日以降)の平成24年度産米食味ランキングの発表を前に、農業関係者の間で緊張と期待が高まっている。

 というのも、昨年23年度産米の食味ランキングで、北海道産「ゆめぴりか」、福岡県産「元気つくし」の2品種が新たにランキング最上位の特Aの評価を得たのをはじめ、ここ数年、米産地としてさほど評価の高くなかった北は北海道の「ななつぼし」、南は九州の佐賀県産「さがびより」、熊本県産「ヒノヒカリ」「森のくまさん」といった銘柄が特Aに加わり、これに東北は岩手、宮城両県の「ひとめぼれ」、山形県の「はえぬき」「つや姫」などが割って入り、「おいしい米」戦線は乱戦模様となっているからだ。

 食味ランキングというのは、日本穀物検定協会が昭和46年から毎年行っているもので、複数産地の「コシヒカリ」ブレンド米を基準として、各県・各産地の代表的銘柄を炊飯、全国5カ所で100人ほどの専門家が実際に試食し、外観、味、粘りなど5項目プラス総合評価、それも相対評価で決められる。基準米同等のものをA’、良好なものをA、特に良好なものを特A、逆にやや劣るものをB、劣るものをB’としている。もっとも検定協会関係者によれば、「最近ではB、B’にランクされるものはない」という。このランキングは消費者人気を左右し、市場価格に少なからず影響を与えることから、生産地や生産者、それに流通関係者が例年、熱いまなざしを注いで、その結果を見守っているというわけである。

●全般的に評価を落とすコシヒカリ

 中でも今年の注目は、新潟県産「コシヒカリ」の動向である。20年前の平成3年度産米を見てみると、特Aは秋田県の「あきたこまち」を除くと、ほかは「コシヒカリ」のみで、新潟県産に限ってみると、従来水質に問題があることからやや評価が低かった上越地区を除くと、他の地区産米はすべて特Aだった。

 ところがここから新潟県産でも大規模営農地帯である下越産が落ち、他にも伝統的に「コシヒカリ」産地として知られる富山、石川をはじめ、福島、茨城、栃木、埼玉県産が特A 入りできなくなっている。こうして見ると、三重県伊賀産や京都府丹後産「コシヒカリ」が特Aに加わってきたものの、ざっくり言うとおいしい米の代表とされてきた「コシヒカリ」に対する味の評価が全般的に落ちている、ないしはその味が飽きられてきているのではないかという疑問が湧いてくるのである。

 実のところ、「コシヒカリ」は農家にとって「つくりにくい米」だと言われている。育ちやすいために、肥料を多くやるとワラが伸びて倒伏しやすくなる。イモチ病など耐病性が必ずしも強くない。収量もさして多いわけではない。米粒も少し小さい。といったことから、生みの親ともいうべき福井県農業試験場では、当初、「こしひかり」(系統名「越南17号」)の福井県での奨励品種採用を見送ったほどである。

 これを拾い上げたのが新潟県農業試験場で、栽培方法さえ工夫すれば「熟色の良さと米質の良さが生きる」ということで県の奨励品種に採用し、さらに千葉県も追随したことから、水稲で「農林100号」という記念すべき番号がつけられ、なおかつ水稲の大産地、越(こし)の国(古代の北陸地方)に光り輝く「コシヒカリ」という素晴らしいブランド名まで与えられた。本来なら試験場での試験栽培段階で消え去る運命の品種だったのが、幸運が幸運を呼び、今日の栄光の座をつかんだのである。

 いまや「コシヒカリ」の代表銘柄といわれる魚沼産にしても、倒伏しやすく栽培に手のかかる品種だったがために、山間地で小規模農家が多く、これまで栽培に適した品種のなかったこの地区で栽培されることになったのだ。たまたま魚沼地域は、田植え時期は寒くて稲はそれほど育たず、結果「コシヒカリ」は倒伏せず、しかも夏場の日中は成長に十分の暑さが確保できる上、朝夕は気温が下がり粘りのある米ができ、この米の弱点を含め特徴が最大限生きることになったのである。魚沼産「コシヒカリ」に限らず「山つき」(山地に連なっている土地)の米は本来的においしいとされている(三重県伊賀産や京都府丹後産が食味ランキング特Aに入っているのも、そのあたりと関係しているようだ)。

BusinessJournal編集部

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