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「ダイヤモンド」vs「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(6月第3週)

携帯電話“電波”で子どもの健康被害続出?マスコミのタブーに迫る

post_293.jpg(右)「週刊ダイヤモンド 6/23号」
(左)「週刊東洋経済 6/23号」
がんのおそれに、精子減少……携帯電話は使ってはいけない!?

「週刊東洋経済 6/23号」の大特集は『夏に勝つ! 塾・予備校』という、中学、高校、大学受験に向けての夏休み前の塾・予備校選び決定版だ。この特集は春の定番だが、今回は受験の天王山といわれる夏の過ごし方がテーマ。教育関係の取材ものは、受験世代の子どものいる編集者・ライターにとっては公私混同取材もできるうえ、塾・予備校の広告費も期待できるという営業的な側面もあってド定番になっている。

 今回も、編集スタッフの気合のいれようが半端ない。『独自調査 2012年度塾別合格実績一覧』を、中学・高校・大学編と掲載。学歴社会バンザイの内容だ。唯一、学歴社会に批判的スタンスの記事は『徹底試算! 中学受験にかかるおカネ 3年間の塾費用250万円 家計をどうやり繰りする』だ。ある調査では小学6年生の2割が経験するという中学受験だが、編集部の調査では合格に必要な塾費用は250万円、この資金についてファイナンシャルプランナーのアドバイスは『中学受験が本格化する小学4年までにできるだけ貯金をすることが大切』で、最低でも100~200万円は必要だというものだ。この世は学歴と金がすべて、と思い知らされるような読後感にさいなまれるが、今回の東洋経済は第2特集が秀逸だ。

 第2特集は『電磁波で健康被害の報告も 携帯電話は安全か?』と、携帯電話や基地局から出る電磁波の身体への安全性の疑問の声を紹介しているのだ。携帯電話の基地局周辺に住む住民の子どもたちを中心に、鼻血、めまい、動悸といった健康被害が続出している。しかも、その被害は、基地局のアンテナが窓から見える2~3階の教室の児童や、基地局と自宅が近い児童ほど発生率が高くなっているのだという。

 ただし携帯電話会社は健康障害と基地局の電波の因果関係を認めておらず、住民の不安は全国各地に広がり、基地局建設の中止や撤去を求める反対運動が全国で勃発、訴訟に発展するケースもあるのだ。

 こうした住民の不安の声は、これまで大手新聞の地方面や地方紙が多少取り上げるだけだった。というのも、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは、マスコミにとっては大スポンサー。マスコミはその利益に反するような記事は扱わないというタブーがあるが、この携帯電話の健康被害問題はスポンサータブーそのものなのだ。こうしたタブーがあるにもかかわらず、東洋経済が携帯電話の健康被害問題を取り上げたのは評価できるのだ。

 記事では、「携帯電話を腰の付近に装着することによる精子の減少」や「携帯電話の電波による脳血流量の上昇」などの海外での研究結果も報告されている。ただし日本の実験では影響が認められておらず、結論が出ていない。そのようななか、昨年5月に世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)は携帯電話など無線周波の電波を、発がんリスクで5段階中の3番目にあたる「グループ2B」に分類し、世界に波紋が広がった。予防的見地から英国では16歳未満の若者に使用制限を呼びかけ、スイスでは規制値を国際基準より厳格化した。一方の日本は、国際防護指針に準拠している総務省が定めた電波防護指針の規制下にある「携帯電話の電磁波は安全」という立場だ。

 ただし、日本の電波防護指針の信頼性に疑問もある。記事『”電磁波ムラ”が決める安全基準』によれば、リスク評価を行う委員に、携帯電話会社からの寄付金が渡っている事実が指摘されている。携帯電話会社には総務省から天下りがある。携帯電話1台につき200円の電波利用料を携帯電話会社が総務省に納めるなど、総務省とはズブズブの関係なのだ。

 原発問題同様、行政の対応は頼りにならず、自分で対策を練るしかないが、その方法は、携帯電話はできるだけ体から離して使用する。子どもには緊急時以外使わせない。端末ごとのSAR値を比較して最も低い機種を選ぶべき……などというアドバイスが掲載されている。SAR値とは、通話中にどの程度のエネルギーが体内に吸収され熱に変換されるかを示した数値だ。米国・ピッツバーグ大学がん研究所がその重要性を喚起しているもので、できるだけSAR値の低い端末を選ぶといいが、各携帯電話会社はこの数値をHP上でしか公表していないという。

交際費がいまだイケイケなのは、商社、証券、広告代理店!

「週刊ダイヤモンド 6/23号」の大特集は『営業の常識が変わった! 新ニッポンの接待』だ。日本企業は、バブル崩壊後、経営合理化を余儀なくされ、接待の軍資金となる交際費は激減。かつて6兆円を超えていた交際費は、いまや3兆円を割り込んで半分以下になった。

 会社の交際費で飲み食いする「社用族」でにぎわった銀座はどこも閑古鳥が泣き、数千軒ともいわれる飲食店が店をたたんだ。さらに、この4月からは医薬品業界が製薬会社の医薬情報担当者(MR)の医師への接待を事実上禁止する自主規制を始めた。このため、日本の産業界の中で最も派手な部類に入るとされた医師接待が4月で消滅してしまったのだ。接待禁止は製薬会社がMRの営業力に依存してばかりいられない時代になったということ。今後は新薬開発力で競い合う時代に突入し、中堅以下の製薬会社は、生き残りに苦労するのではないかという。

 必見は『交際費の絶対額ランキング』だ。いまだ交際費がジャブジャブの企業が次々にランクイン。1位・三菱商事、2位・野村証券、3位・電通、4位・住友商事、5位・丸紅と、上位を占めるのは、やはりという企業ばかり。1位、4位、5位は資源高を背景にして空前の好景気に沸く大手総合商社(10位には伊藤忠商事も)、2位は6月に明らかになった巨額増資のインサイダー取引疑惑でも過剰接待が問題になった証券界のガリバー、3位には「飲ませ、食わせ、抱かせ」の広告業界最大手が名を連ねている。電通は高給でも知られるが、その高給は接待費込みという自腹文化ゆえとされてきたが、実際には交際費もしっかりと計上されているのだ。そのほか、大手ゼネコンがトップ30に12社もラインクインしているのも特徴だ。

 こうした交際費の相手先の多くは、やはり官庁だ。『官庁 懲りない経産省の「隠れ会合店」求められるクリーンな意思疎通』によれば、東京都港区西麻布の閑静な住宅地の一角にある研修施設「霞会館」は経済産業省の隠れ会合店。経産官僚が商社や投資銀行といった産業界関係者と会食する際に指定する「行きつけの個室会席店」で、民間同士の接待が1次会にとどまるこの時代に「深夜2時ごろにタクシー券で帰宅する」というバブル時代の勢いそのままの接待が行われているのだという。

 しかし、金融機関に旅行会社、アパレル……多くの業界は、カネのかかる接待はできなくなっているのが現実だ。そこで、今回のテーマである「新ニッポンの接待」となるわけだが、肝心の『Part3 絶対に成功する接待講座』は肩透かし。『「島耕作」が徹底伝授! もてなし接待のマル秘テクニック』では、『課長島耕作』の作者・弘兼憲史氏が語る接待のノウハウを紹介。『たいこ持ち芸人が伝授する接待術』では、サバンナ高橋が伝授する懐に入り込む会話術を紹介しているのだが、どれも現実感がなく、読者にとっては物足りない。唯一役に立ちそうなのは、『経験者1000人が明かす 本当にうれしい接待・迷惑な接待』という記事の中の「優秀な営業マンの中では飲食にも増して手土産が重要になっている」という点だ。普通では買えない限定物の小山ロール(兵庫県三田市のパティシエエスコヤマの限定一日1600本のロールケーキ)などが喜ばれるという。

 できればダイヤモンド社自身の交際費はどれくらいで、取材対象者にどんな接待をしているのか、そうした実感のこもった記事があれば説得力が抜群だったのだが……。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

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