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ソニー、社長就任から1年の平井改革の行方…次々と新組織立ち上げの狙いと懸念

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ソニー本社(「Wikipedia」より/Shuichi Aizawa)
 トリニトロンカラーテレビ、携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」。過去に“わくわくする”家電製品を生み出してきたソニーだが、最近はヒットに見放され、最後の大型ヒット商品は家庭用ゲーム機「プレイステーション」。実に20年近く前だ。昨年4月に就任した平井一夫社長兼最高経営責任者は危機感を抱き、次々と新組織を立ち上げた。相次ぐなりふりかまわぬ取り組みは、ジリ貧脱出に結びつくのか--。

 平井社長が1年前の4月に就任して、内外に打ち出したメッセージが「ワン・ソニー」。縦割りに閉じていた組織に横の連携の楔を打ち込むことで、これまでにない製品やサービスの提供を生み出したい考えだ。

 なかでも就任早々の12年4月5日、報道陣を前に語ったのがプロフェッショナル部門と民生部門の融合だ。ソニーと聞けば、テレビやカメラ、ゲームなど一般消費者向けの製品の印象が強いが、同時に異なる顔も持つ。プロ向けの業務用機器部門だ。

「最近、アツギと交流が増えて、行き来が大変ですよ」。ソニー本社の社員はこうこぼす。アツギとは神奈川県厚木市。業務用機器の開発部門の本拠地だ。半導体や映画用カメラなどの総本山で、放送局用カメラの世界シェアは6割超。世界の放送局で「アツギ」といえば通じるほどだ。

 かつては、業務用の強みは民生品を生み出す原動力になっていた。「ハンディカム」などヒット商品も多い。ただ、大企業にはつきものだが、組織の大規模化に伴い、目の前の仕事に対応することだけが目的となるケースが増えてしまった。特定顧客が相手の業務用機器は顕著だ。

●新組織を続々新設で、新商品・サービス創出を図る

 こうしたなか、12年4月、業務用放送機器担当の執行役・根本章二に、全社の研究開発職も兼務させた。同年秋にはカメラなどを手がける事業本部の中に新部署を設置。業務用部門と一般消費者向け部門それぞれから人員を配置。アイデアの融合を加速させた。

 業務用機器と民生用機器の融合以外でも、これまでにない“ソニーらしい”製品を生み出すための取り組みが目立ち始めている。12年夏には「ビジネスデザイン&イノベーションラボラトリ」と呼ばれる新部署を立ち上げた。専門領域の異なる100人が新規事業創出のために集められた。

 同年秋にはクラウド専属の部署を新設。ソニー社員は「クラウドの人員は、携帯電話やパソコンなど端末の希望をくみ取る形で動くケースが多かった。専門組織を設けることで、クラウド側に自主性を持たせて新たなサービスの開発につなげる強い意志のあらわれ」と語る。

●出井の残した負の遺産

 一方では冷ややかな見方もある。ソニーOBは「かつては社内にコーディネーターのような社員がいた。誰に頼まれるわけでもなく、人と人を結びつける。自然と新しいことをやろうという空気が生まれた。組織をつくればよいというわけでは……」と語る。   

 現役のソニー社員も「出井(伸之・元社長)が導入した評価制度の一環で、開発現場の成果や取り組みも数値化しようとした。これによって、社内の“あそび”がどんどんなくなっていった」と振り返る。

 実際、鳴り物入りで始まった「ビジネスデザイン&イノベーションラボラトリ」の取り組みは、難航しているとの情報も漏れ伝わる。「昨年内に期待できそうなプランを絞り込むはずだったが、正直、タマ不足と聞いている」(同社関係者)。業を煮やしたのか、平井社長は直轄で複数の新規プロジェクトを上記の一連の取り組みとは別に走らせているという。

 ソニーは、業績面ではパナソニックやシャープなど大不振の家電組の中では一歩抜け出した格好だが、“稼ぐ”事業が見えてこないのが現状。果たして、名実ともに復活を印象づける製品やサービスは生まれてくるのだろうか。
(文=江田晃一/経済ジャーナリスト)