軽自動車が売れている背景には、税金が安いこと、高齢化、若者のクルマ離れといった複数の要因があると考えられる。ホンダは「今後も軽市場が伸びる」と見て軽事業強化に舵を切った。「フィット」などの登録車(排気量660cc超)を生産してきた鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)を軽の専用工場と位置付け、軽市場で大攻勢をかけている。
戦略転換の成果はすでに実績に表れており、2012年度の軽自動車販売台数は前年度に比べ2倍の36万2344台、軽自動車市場に占めるシェアは前年度の1.8倍の18.4%に跳ね上がった。今後も車種を増やし、「ビート」のようなスポーツカーも出す予定だ。
しかし、ホンダ系部品メーカーの幹部は一様に浮かぬ顔だ。登録車に比べると車両の平均単価を低く抑えねばならず、製造原価をできるだけ安くしなければならないからだ。車の部品の7〜8割は部品メーカーが製造しており、軽シフトによる収益性悪化のしわ寄せの大半を部品メーカーが被る構造になっている。
軽の部品は「フィット」などのコンパクト車に比べると単価が4割安いともいわれるうえ、車体が小さいため部品点数も少ない。ホンダがあまりにも急激に軽自動車シフトを進めたため、部品メーカーの原価低減策が追いつかなかったというわけだ。
しかも、軽は日本独自の規格。他国で生産するスモールカーに使えない部品も多く、生産性向上の余地はますます狭まる。
軽自動車の快走は当分続きそうだ。今年は日産自動車が三菱自動車と共同開発した軽自動車の第1弾が発売される予定で、競争激化による原価低減要請も厳しくなることが予想される。とはいえ、完成車生産の海外シフトで国内生産台数が先細りするなか「国内の雇用を維持するためにも、軽部品だからといって失注や転注は避けたい」(部品メーカー首脳)ことも確か。少しでも受注をためらえば、中国や韓国勢のほか、スズキ系やダイハツ系など、軽自動車部品に強みを持つライバルに受注をさらわれかねない。
快走する軽自動車の陰で、部品メーカーのサバイバルレースも本格化している。
(文=編集部)