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西武HDへTOBのサーベラス、株主総会直前で露呈した矛盾…西武再上場のカギとは?

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西武
西武HD傘下のプリンスホテルが運営する「ザ・プリンス・パークタワー東京」(『Wikipedia』より)
 西武ホールディングス(西武HD)の株主総会を約1週間後に控えた6月17日夕刻、サーベラスが記者会見を開いた。会見の目的は、総会に向けたサーベラス・グループの取り組みを、メディアや西武HD株主に周知徹底することにあった。

 サーベラス側は全36項目に渡る事前質問事項を西武HDへ送付したほか、株主総会の状況をライブで動画配信し、総会終了後は西武HDのHPでアップするなどの方法で一般に公開することを要求。西武HD株主に対しては、同社経営陣の株主に対する姿勢を総会の場で直接見た上で、サーベラスによる提案に賛成するか反対するか決めてくれ、と呼びかけている。

 西武HD側はメディアにはプレスルームを用意し、音声だけでなく壇上のみとはいえ総会会場内の映像をリアルタイムで見られる準備をしているが、サーベラスはメディアだけでなく一般への公開も求めており、この点は正論なので筆者もまったく異論はない。

 ただ、サーベラスの主張が果たして西武HD株主の心を動かすのかどうかという点では、なんとも物足りなさが残る会見だった。

●問われて当然の13年3月期業績予想と着地のブレ

 36項目の質問事項は1部と2部に分けられていて、1部は経営全般に関する質問、2部は西武グループの各事業部門に関する質問になっている。

 1部はさらに3つに分けられており、最初に掲げられているのが経営実績とコーポレートガバナンスに関する質問で、2番目が3月26日に2013年3月期業績予想の下方修正を公表しておきながら、5月14日に公表した着地では下方修正後の計画値を大きく上回り、期初計画なみの着地となっていた原因の追及。3番目が将来予想に関する説明を求める内容になっている。

 2番目、3番目は至極真っ当な質問だ。3月26日の下方修正は、常識的に考えると3月15日、もしくは3月22日あたりまでの速報値を元に修正をかけたものと考えるのが妥当だろう。とすれば、わずか10日~2週間程度の実績を上乗せしたら、予想値を大きく上回ってしまったというのはなんとも解せない。下方修正後の計画値と着地を比較すると、売上高では5億8000万円の未達だが、営業利益では21億円の上ブレ、償却前営業利益では20億円強、当期純利益では32億円の上ブレだ。

 5月14日に国交省クラブで行われた決算記者会見の場では、売上高の上ブレ理由は東横線との直通運転開始効果と好天、営業利益の上ブレ理由は工事竣工時の経費精算が想定と違ったという説明をしている。

 従って、売上高に関しては鉄道事業を含む都市交通・沿線事業部門が3月後半2週間で想定以上の伸びがあった一方で、どこかの部門で2週間の売上高が大きく落ち込んだということになる。売上高が未達なのに営業利益の上ブレ幅が大きく、なおかつその理由が工事竣工時の経費精算の問題だというのであれば、建設部門で大規模かつ低採算の工事の竣工が4月1日以降に延びたというのが最も考え得る理由だ。竣工が翌期への期ズレを起こすと売上高が想定よりもショートする一方で、コストも翌期計上になって想定以下になる。

 いずれにしても、国交省クラブの場などという限られた場ではなく公の場で、売上高と営業利益、償却前営業利益の修正計画と着地の差異原因を、部門別に、かつ具体的に説明するべきではあるだろう。アナリストカバーが付いている上場会社では当たり前にやっていることだし、西武HDも上場すれば鉄道セクターの一角としてアナリストカバーの対象銘柄になることは間違いないのだから、この程度の説明が必要であることにも異論はない。

●自らの責任は棚に上げるサーベラスの主張

 だが、1番目の質問は一見正論に見えながら、株主の心を果たして動かすものなのかどうか、疑問を持たざるを得ない。

 ざっと要約すれば、05年11月に策定した当初の中期事業計画がリーマンショック後にほぼ達成不能の状況に陥り、12年3月に策定し直した中期計画も、初年度、つまり終わったばかりの13年3月期から未達になることが確実になったため、今年3月にさらに計画を1年間後ろ倒しにしている。計画達成のためにどの程度努力したのか説明せよ、と言っている。

 サーベラスは1年前までは西武HDと良好な関係にあり、手に手を取って経営改善に努め、その実績も上がっていると主張。12年3月期の償却前営業利益756億円のうち60億円、13年3月期の償却前営業利益801億円のうち80億円は、サーベラスの手柄だと主張している。

 西武HD経営陣がサーベラス側に一方的に指導される立場にあったというならこの主張も正当な主張といえるだろうが、事実がどうだったのかは西武HD経営陣に本音を聞いてみなければわからない。