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中国リスク警戒、産業界に広まる〜中国経済減速で打撃受ける機械、化学、カメラ業界

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コマツ本社のコマツビル(「Wikipedia」より/famifamifami)
 日本貿易振興機構(ジェトロ)が8月14日に発表した2013年上半期(1~6月)の日中貿易総額(ドル換算)は1472億ドルで、前年同期比10.8%減となった。上期のマイナスは4年ぶり。中国経済の減速が響き、輸出額が同16.7%減の614億ドルと2年連続で減少した。金属加工、建設・鉱山用機械、半導体などがマイナスとなった。

 中国景気の減速が建設機械大手の業績を直撃した。コマツの13年3月期連結決算の本業の儲けを示す営業利益は、前期比17.5%減の2116億円(1月時点の見込みは2300億円)。日立建機は同6.1%減の514億円(同560億円)で、ともに従来の予想を下回った。インフラ投資の伸び悩みで、建機の販売が振るわなかった。日立建機幹部は「中国市場がどうなるか、正直なところわからない」という。

 14年3月期は円高の是正に加えて中国での需要の回復を見込み、両社とも大幅な営業増益を見込んでいる。コマツは前年同期比44.1%増の3050億円、日立建機は61.2%増830億円である。

 しかし、13年4~6月期は、コマツ、日立建機とも鉱山用機械の低迷が響き、そろって営業減益となった。コマツは同5.9%減の524億円、日立建機は同27.9%減の95億円。日立建機は最終損益段階で11億円の赤字に転落した。中国やアジア太平洋地域で鉱山機械の不振が続くが、コマツ、日立建機とも14年3月期の営業利益の予想を据え置いた。

 とはいっても、中国の4~6月の国内総生産(GDP)の伸び率は7.5%と、1~3月の7.7%から鈍化した。「7.5%は今年の下限」と李克強首相は言うが、2四半期連続で鈍化しているだけに目標の達成は微妙だ。シャドーバンキング(影の銀行)問題を抱えており、「中国景気が底を打った」という見方をする投資家は少数派だ。

●日本車の生産急ブレーキが関連産業に波及

 化学大手の13年4~6月期連結決算は、円安で輸出採算が改善。軒並み経常増益となった。三菱化学、田辺三菱製薬、三菱樹脂、三菱レイヨンを傘下にもつ総合化学メーカーの三菱ケミカルホールディングス(HD)は営業利益が同50.5%増の235億円、経常利益は2倍の245億円、最終損益は110億円の黒字(前年同期は55億円の赤字)に転換した。偏光板の主要部材に使う光学用フィルムが、全体の収益のアップに貢献した。

 これまで三菱化学は中国事業を拡大してきた。12年に中国石油化工との合弁で樹脂の新しい設備を立ち上げたほか、リチウムイオン電池に使う素材や電解液の現地生産比率を高めたが、タイミングが悪かった。現地の日本車の生産・販売に急ブレーキがかかったことで、自動車の内装などに使う樹脂の販売も半減した。

 足元の円安で収益は改善したとはいえ、為替だけで日本の石油化学の構造問題が解決するわけではない。三菱ケミカルHDと旭化成は8月2日、水島コンビナート(岡山県倉敷市)のエチレン設備1基を16年春めどに停止することで合意した。両社は11年4月から水島エチレン設備を一体運営するとともに、現行の2基体制から1基に集約する検討を進めてきた。水島の設備を集約した後も、供給能力は640万トンある。国内需要の500万トンに対して、まだ需給ギャップは大きい。

 中国の景気減速の影響は化学にも及ぶ。「中国で伸びなかったことで、アジア全体の市況が低迷した」からだ。

●ニコン、ロームも業績見通し狂う

 世界2位のデジタルカメラメーカー、ニコンの13年4~6月期決算は、デジタルカメラ市場の劇的な変化を浮き彫りにした。スマートフォン(高機能携帯電話)の普及と写真を即時に撮れるアプリケーション(応用ソフト)の便利さに押されて、デジカメの需要がこれまでにないペースで落ち込んだためだ。

 ニコンの13年4~6月期の売上高は前年同期比7.9%減の2389億円、営業利益は同74.2%減の60億円、純利益は同71.9%減の44億円だった。コンパクトカメラやレンズ交換式カメラの需要が急減したことが響いた。一眼レフは中国市場の伸び率が鈍化した。

 14年3月期の売上高は5月に発表していた予想から6%引き下げ1兆400億円、純利益も23%引き下げて500億円に下方修正した。コンパクトカメラの販売計画は従来予想から18%引き下げて1150万台に、レンズ交換式カメラは8%引き下げて655万台とした。中国市場については景気回復が今期後半までズレ込むと判断して、販売計画を下方修正した。中国と欧州の減速で、ニコンの読みが大きく狂ったといっていいだろう。

 8月9日の東京株式市場では、ニコン株は前日比14%安と急落した。コンパクトカメラの販売見通しを前日に大きく引き下げたことへの失望から売られた。9月2日には今年の安値、1607円をつけた。高値(5月23日)の2971円から54%も下げたことになる。

 半導体大手のロームの13年4~6月期の売上高は前年同期比7.8%増の800億円、営業利益は同37.0%増の18億円、純利益は67億円と前年同期の1000万円から回復した。売り上げの2割を占める自動車向け電子部品の落ち込みに、主要取引先である国内電機メーカーの不振も重なり、前期まで2期連続で最終赤字となった。4~6月期は希望退職で1月に200人強の人員を削減した効果が出た。4~6月期は円安で55億円の為替差益が発生し、純利益を押し上げた。工場閉鎖や半導体の材料見直しなどを進め、14年3月期の最終損益は135億円の黒字転換を見込んでいる。

 ジェトロの調査によれば、13年上半期の日本から中国への対外直接投資は49億ドルで前年同期比31%減少。中国リスクを警戒する動きが産業界に広がっている。中国関連銘柄は楽観的な見通しを立てている経営者が多いが、外資系証券会社のアナリストは「業績の先行きについては慎重な見方をしておいた方がいい」との見方を示している。
(文=編集部)