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イオン、自社批判の「週刊文春」陳列撤去、問われる企業の社会的責任〜イオンは取材拒否

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イオングループ本社ビル
(「Wikipedia」より)
 10月9日に発売された「週刊文春」(文藝春秋/10月17日号)が、大手流通チェーン・イオンのすべての直営店から撤去された。同社によるとこの処置は、同誌の記事『「中国猛毒米」偽装 イオンの大罪を暴く』に「不適切な表現があり、お客様に不安と誤解を与える」からとしている。これに対して同誌編集部は「販売中止は読者の知る権利、報道の自由を失わしめ、誠に遺憾です。当該記事は事実です」と同社ウェブサイトでコメントしている。

 そして文春発売から1週間後の16日に、イオンは同誌の産地偽装米報道によって名誉が毀損されたとして、東京地裁に1億6500万円の損害賠償、同誌の販売中止と回収、謝罪を求める訴訟を起こした。これに対し同誌編集部は「記事には絶対の自信を持っている」とし、全面的に争う構えだ。また同日、イオンは朝日新聞と読売新聞に『「安全・安心」な お米とは何か。私たちは、もういちど原点に立ち戻ります』というタイトルで、取引先の米の産地偽装行為に対する釈明の全面広告を出している。

 騒動の発端となった文春記事は、主に中国産や米国産を国産と偽装していた三重県内の米穀販売会社・三瀧商事の米を使った弁当やおにぎりを、イオンの検査態勢がずさんで偽装を見抜くことができずグループ店舗で販売した、と報じている。これに対しイオンは同社ウェブサイトで、「あたかも人体に有害な食品を安全な商品と偽って販売していたかのような誤解を読者に与える。内容についても事実と異なる記述が多く含まれており、断固たる措置をとる」などと訴訟前に抗議していたが、今回その「断固たる措置」を実行に移したわけである。

●文春陳列撤去への疑問

 今回の騒動においてどちらの主張が正しいのかについては、今後の裁判の進行がまたれるところであるが、現時点で注目を集めるべき点は、一部上場企業が、自社の気に入らない記事が掲載されているという理由で、その出版物を撤去したという点であろう。
 
 今回の撤去にあたり、イオンから文藝春秋へ事前の連絡があったのか、文藝春秋雑誌販売部に問い合わせたところ、「事前連絡は一切なかった」という。

 ここ数年、地方都市の駅前や市街地にある商店街の「シャッター通り化」「ゴーストタウン化」が社会問題となっているが、その要因の一つとして、2000年の大規模小売店舗法改正により、全国いたるところにショッピングモールが次々とオープンしていった点が指摘されることが多い。

 そして、その最たるものがイオンだといわれている。地方の田園地帯のど真ん中に忽然と現れる巨大なイオン。そのモールは1000台規模の巨大な無料駐車場を持ち、スーパーマーケット、シネマコンプレックス、専門店街、診療所、カルチャーセンターをはじめあらゆる商品とサービスを提供する「街」といってよいだろう。そんなイオンには地元の住民はもちろん、高速道路を使って他県からも客はやって来る。実際に週末に地方のイオンに行くと、多くの家族連れなどで何かお祭りでもやっているのかというぐらいの賑わいぶりだ。

 一定規模以上の大きな都市であれば、イオンだけではなく、いくらでも選択肢があるが、地方生活者にはほかに選択肢がない場合も多い。そんなイオンが、記事が自社にとって不愉快であるという理由で、出版物を店頭から撤去させるというのは、「消費者に商品を選択する最低限の自由を提供する」という大企業の社会的責任の観点から、問題があるといえるのではないだろうか。

 一連のイオンの対応について、同社広報部に取材を申し込んだところ、「何もお答えすることはない」とのことであった。

 今年夏、7月にロシアで同性愛の宣伝を禁止する法律が発効したことに対する抗議として、米国でロシアの代表的なお酒であるウオッカの不買運動が展開された。今回イオンのとった処置は、米国であればイオンへの不買運動に発展しかねないものといえよう。
(文=久保田雄城/メディア・アクティビスト)