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「ダイヤモンド」vs.「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(9月第4週)

佐川急便、アマゾンの負担転嫁に耐えられず取引停止…ヤマト一極集中への懸念

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ヤマト運輸 HPより
 「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/9月28日号)は、極めて中身が濃い。まず巻頭コラム「経済を見る眼」「消費増税とオリンピック景気」では、東京大学大学院教授の伊藤隆敏氏が登場。財政再建派の伊藤氏は2015年に10%となる消費税率を、東京オリンピック開催前に20%に引き上げよと提言している。

 「オーストラリアが00年のシドニーオリンピックの数週間前に、10%の付加価値税を導入した」「オリンピックに来る観光客にたっぷりと税金を払ってもらおうという抜群のタイミング。日本も財政再建のために、20年の前にぜひ消費税率を10%から20%に引き上げ、財政再建を盤石なものにすべきだ」という。英国でも、昨年のロンドンオリンピック直後に付加価値税の増税があった。オリンピック開催には、消費増税話がセットで議論されるようだ。

 消費増税がらみとして、ニュースコラム「ニュース&リポート 法人版マイナンバー導入で何が変わるのか」で、16年に個人版と同時に法人版のマイナンバー制度も始まるというニュースを紹介している。個人版のマイナンバー制度では、国民一人ひとりに番号を割り振って、所得や納税実績、社会保障に関して一元的に管理するというもので、企業版も同様に企業1社ごとに共通番号が割り振られ、行政機関は事務作業の効率化を図ることができるのだ。消費税の軽減税率導入の際には(軽減税率の確定作業のために)法人番号が欠かせないこともあり、開始に向けて動き出している。

 法務局の会社法人番号、厚生労働省の労働保険番号、社会保険事業所整理番号などに企業間の受発注の伝票データとバラバラの縦割り番号の問題が一気に解決される。企業としても歓迎すべきことだが、当然ながら税務署や国税庁にとっても、法人税や消費税についてのチェックがしやすくなるために、いろいろと抜け道を模索している企業にとっては、新たな対策も必要になってくるだろう。

●ヤマト運輸に重くのしかかる負担

 同誌は第1特集「物流 最終戦争」で、物流業界に迫っている。「日本の物流業界の勢力図は、ネット通販の巨人、アマゾンが決めている。佐川急便の取引返上の深層とは。そして王者ヤマト運輸は次世代戦略をどう描く」という内容だ。

 売り上げ拡大一辺倒だった佐川急便の顧客に対する値上げ交渉が9月末で終了する。驚きをもって迎えられたのが、ネット通販大手、アマゾンとの取引のほとんどを返上したことだ。

 「アマゾンは当日配達地域の拡大、送料の無料化など、配送サービスの拡充を強力に進めてきた。その負担を転嫁されることに耐えられなくなった佐川は、大幅な値上げを持ちかけて決別した」。SGホールディングス(佐川グループの持ち株会社)の栗和田榮一会長は「海外では、サービスをすればきちんと対価を払うのが原則。よいサービスをしても、ろくに払ってもらえないのではおかしい」と語り、採算重視路線への転換を決めたのだ。

 アマゾンの宅配便は事実上の「ヤマト一極」となったが、不安材料がある。「佐川の分まで引き受けて、今後も荷物が増加し続ければ、ドライバーをほとんど正社員で抱えるヤマトの負担は際限なく膨らむ」のだ。

 また、ネット通販業界では、産地から直接出荷・販売している業者(産直業者)や、メーカーの通販を囲い込む動きが活発だ。アマゾンのマーケットプレイスや楽天のスーパーロジスティクスといったサービスがその典型だ。

 「彼らの使う物流センターが急ピッチで増設されている。アマゾンが9月に世界最大級の物流センターを神奈川県小田原市で稼働させたほか、楽天も今後2年ほどで全国に6つの大型物流センターを新設する」

 「アマゾンや楽天も、われわれにとっての競争相手になる可能性がある」とヤマト関係者が語るように、物流をめぐる戦いは業種の壁を越え、顧客企業といえどもライバルになる、激しい時代を迎えているのだ。

●コーヒー市場で激しい争い

 第2特集は「激変! コーヒー市場最前線」というタイトルで、コーヒー市場の争いを解説している。

 コンビニエンスストア最大手、セブン-イレブン・ジャパンが今年1月に発売したカウンター販売のいれたてコーヒー「セブンカフェ」が絶好調。当初想定していた1店舗当たり1日平均60杯を大きく上回り、100杯に迫る勢いだという。9月末をメドに全国約1万6000ある全店の導入を完了し、年間450億円以上を売り上げるメガ商材になる公算が大きい。コンビニが扱う商品の平均的な粗利益率は3割前後だが、コーヒーは5割以上とうまみの多い商品で、牛丼店のすき家も販売を始めているほどだ。

 こうした現状に危機感を持つのが、缶コーヒー業界だ。缶コーヒーの売り上げは前年同期比4~5%ダウンが続く。新たなブランドを開発し、市場開拓にも乗り出しているという。日本コカ・コーラも38年ぶりの新ブランド「ルアーナ」を発売した。

 インスタントコーヒー業界でも、ネスレ日本が「脱・インスタントコーヒー」として、53年間使ってきたインスタントコーヒーの呼称を「レギュラーソリュブルコーヒー」に全面刷新し、新たな顧客を目指す戦略に出た。

 カフェチェーン業界では、スターバックスが9月に日本進出18年目にして、総店舗数が大台の1000店を突破。店舗数首位のドトールコーヒー(約1500店)にも迫りつつある。

 セブンの参入が引き金となって業界を活性化させる。競争が商品やサービスの質を高める好例といえるだろう。今後の展開に注目だ。
(文=松井克明/CFP)