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都民銀・八千代銀経営統合で加速する、地銀再編の舞台裏〜新自己資本規制、金融庁の意向…

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都民銀・八千代銀経営統合で加速する、地銀再編の舞台裏〜新自己資本規制、金融庁の意向…の画像1八千代銀行本店(「Wikipedia」より/Jmho)
 地方銀行が再編に向けて動き出した。

 東京都に営業地盤を置く東京都民銀行と八千代銀行は、経営統合で基本合意した。両行は2014年10月をメドに設立する共同持ち株会社の傘下に入る。13年3月末の預金量は都民銀(49位)と八千代銀(57位)との単純合算で、4兆3963億円。地銀21位に浮上する。関東圏の地銀の中では横浜銀行、千葉銀行、常陽銀行、群馬銀行、足利銀行に次いで6番目の規模となる。

 今年3月末で中小企業金融円滑法が終了したが、政府は法律の終了後も中小企業への支援や新規融資枠の確保を金融機関に求めている。だが、銀行は不良債権の増加につながりかねない新規貸し出しには慎重だ。

「地域金融機関は広域での提携や再編を」。自民党の日本経済再生本部が5月の中間提言で、地域金融機関の再編を促す文言を盛り込んだ。党内には「日銀が金融緩和策を打ち出しても融資が増えないのは、銀行が貸し渋りをしているためだ」との疑念が根強くある。

 自民党が特に問題視するのは、預金に対する貸出金の割合を示す預貸率だ。バブル崩壊後はほぼ一貫して下がり続け、地銀は約7割、信用金庫や信用組合は約5割にとどまる。お金が銀行に滞留したまま企業に流れなければ、日本経済を成長軌道に戻すという安倍政権の経済政策・アベノミクスの達成はおぼつかない。

 監督官庁の金融庁では、破綻処理で辣腕を振るってきた畑中龍太郎長官が異例の就任3年目に突入した。金融庁は9月に公表した新しい検査・監督方針で、地域金融機関に5~10年後の経営戦略を明確にするよう求めている。政府・与党、監督官庁は地銀再編で足並みを揃えた。3メガバンクに集約が進んだ大手銀行と違い、地銀・第2地銀は依然として全国に105行がひしめき合う。

●主流は持ち株会社方式

 地銀再編で主流になっているのは、持ち株会社方式による経営統合である。共通部門を持ち株会社に集約しつつ、銀行は各地域でそれぞれ看板を掲げて営業する。地域ごとの事情が多様な地銀では、特に効果的な手法だ。この持ち株会社方式による地銀の再編は都民銀・八千代銀で10例目になる。例えば以下のように、持ち株会社に2〜3行がぶら下がっているケースも多い。

 ・ほくほくFG(設立03年):北陸銀行(富山)、北海道銀行(北海道)
 ・フィデアHD(同09年):北都銀行(秋田)、荘内銀行(山形)
 ・山口FG(同06年):山口銀行(山口)、もみじ銀行(広島)、北九州銀行(福岡)
 ・トモニHD(同10年):香川銀行(香川)、徳島銀行(徳島)
 ・ふくおかFG(同07年):福岡銀行(福岡)、親和銀行(長崎)、熊本ファミリー銀行(熊本)
 ・じもとHD(同12年):きらやか銀行(山形)、仙台銀行(宮城)
(FGはフィナンシャルグループ、HDはホールディングスの略)

 ちなみに、持ち株会社方式で統合した後に合併した銀行は、札幌銀行を合併した北洋銀行(北海道)。池田銀行と泉州銀行が合併した池田泉州銀行(大阪)。和歌山銀行を合併した紀陽銀行(和歌山)がある。地銀の近畿大阪銀行(大阪)はりそなHDの傘下だ。

●新自己資本規制も後押し

 ここにきてにわかに地銀再編本番との声が高まってきたのは、新しい自己資本規制が導入されることになったためだ。金融庁は地銀・第2地銀や信用金庫、信用組合を対象に新たな自己資本規制を14年3月期から原則、10年をかけて導入する。普通株式や内部留保、強制転換条件付きの優先株式(公的資金)などのコア資本で自己資本比率4%の維持を求める。

 自己資本比率の最低基準である4%は従来と変わらないが、自己資本の定義を厳格にした。劣後債や劣後ローン、強制転換条項の付いていない優先株、金融機関同士の株式の持ち合い、繰延税金資産を一定の割合で資本から除外することで資本の質を高める。

 この結果、地銀の自己資本比率は著しく低下する。都民銀の13年6月末の新自己資本比率は3.3%。八千代銀は4.2%。都民銀は最低ラインの4%を割っている。両行の経営統合は、つまるところ金融庁主導であり、東京の地銀統合で口火を切り、地方の地銀・第2地銀に波及させるという狙いがある。新しい自己資本比率の導入が、その背中を押す。

 13年6月末時点で新自己資本比率が4%を割った銀行をリストアップしてみると、以下の通り東北と関西の地銀、第2地銀に多い。

【新自己資本比率4%以下の銀行(13年6月末時点)】

 青森銀行(青森)3.6%、みちのく銀行(同)3.6%、東邦銀行(福島)3.2%、福島銀行(福島)3.5%、大東銀行(同)3.8%、北越銀行(新潟)3.7%、長野銀行(長野)3.9%、関西アーバン銀行(大阪)2.8%、みなと銀行(兵庫)3.5%、トマト銀行(岡山)3.6%、四国銀行(高知)3.9%、豊和銀行(大分)3.6%、フィデアHD(宮城)2.8%、池田泉州HD(大阪)3.1%

 新自己資本比率が4%台の地銀も少なくない。早急に自己資本比率の引き上げを迫られるわけではないが、今後、資本増強策を急ぐ必要がある。

 地銀再編の最大の注目点は、東京証券取引所に上場を申請した足利HD傘下の足利銀行である。大株主である野村HDは株式を引き受けてくれる金融機関をずっと探してきたが、引き受け手が見つからないまま、年内の再上場に踏み切った。足利銀は再上場後、関東地区の地銀再編の焦点になるとの見方も強い。

 今後ますます再編機運が高まる地銀業界の動きから、目が離せない状況が当分続きそうだ。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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