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夏以降倒産増の懸念も~アベノミクス好況演出の恣意的報道、読者の新聞離れ加速か

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日本経済新聞社東京本社(「Wikipedia」より/Takkitakitaki)
「企業倒産、23年ぶり低水準」--2月11日付日本経済新聞は調査会社・東京商工リサーチの発表に基づき、1月の全国の企業倒産件数が前年同月比7.5%減の864件、倒産件数が前年同月比15カ月連続減と報じた。「1月としてはバブル経済により倒産件数が大きく抑制されていた1991年以来、23年ぶりに900件を下回った」と解説している。しかし、この報道について他の全国紙記者の間では「調査結果の良い面だけを伝えている」「アベノミクス全面支援の論調」と疑問の声が上がっている。

 確かに倒産件数の減少は報道の通りであるが、見逃せないのが地区別の倒産件数状況だ。企業が集中する関東が前年同月比で20%超、件数にして384件から304件と80件の大幅減少。全体の倒産件数の減少数が70件であることを考えれば、都市部の好況が全体の減少に大きく寄与していることがわかる。

 全体で見れば、9地区中5地区で倒産件数が増えており、実際、北海道や九州はそれぞれ14%、17%と2ケタ増。「バブル期以来の好況ぶり」とはほど遠い現実がうかがえる。

●報道姿勢に新聞記者の間で疑問の声

 もちろん、首都圏の好景気が全国に波及して地方の倒産も減少するというシナリオを描けなくもない。ただ、データを発表する東京商工リサーチが倒産件数の発表資料で景気に懸念を示しているのだから穏やかでない。

「4月以降、法人税や預かり消費税などの納付期限が控えている。業績不振に陥った企業にはキャッシュアウトの負担が重くのしかかり、資金繰りが窮屈な中小企業への金融機関の貸出動向が注目される。こうした事情を背景に企業倒産は経営改善が先送りされた企業を中心に、夏場以降、緩やかに増加する可能性が高まっている。」(東京商工リサーチ「倒産月報ページ」より引用)

 企業件数が減少しているのは間違いないが、この指摘を踏まえ他全国紙経済部記者は「発表でも先行きの懸念は語られている。いくら数字上はバブル期以来とはいえ、こうした報じ方には疑問が残る」といぶかしがる。

 加えて「23年ぶり」というのはあくまでも東京商工リサーチの統計だ。毎月の倒産企業件数の発表としては、帝国データバンクのものもある。帝国データバンクの調べでは前年同月比5.3%減の809件。前年同月は下回っているが、前年同月比ベースでは6カ月連続となっており、東京商工リサーチの同数値に比べると短い。加えて、日経新聞は23年ぶり倒産件数の少なさを強調しているが、帝国データバンクによれば06年1月は同730件となっており、東京商工リサーチの調査より少ない数字も出ている。「バブル期以来」とはほど遠い。

 もちろん新聞にすべての公表資料を掲載することはできないが、「都合の悪いデータに目をつぶって好況ぶりを演出するというのは、果たして経済紙のあるべき姿なのか」(全国紙記者)との声も聞こえてくる。こうした影響力を持つ大手紙の姿勢は、消費者の新聞離れをますます加速させかねない。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)