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九電川内原発、なぜ再稼動一番手に?“談合破り”の裏に厳しい財務事情、全国で再値上げも

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九電川内原発、なぜ再稼動一番手に?“談合破り”の裏に厳しい財務事情、全国で再値上げもの画像1九州電力本社(「Wikipedia」より/Muyo)
 2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故を受け停止中だった原発の再稼動としては一番手に、九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)がなる。原子力規制委員会は川内原発1、2号機の審査を優先して進めることを決め、早ければ今夏中にも再稼動となる。

 昨年7月に施行された原発の安全性に関する新規制基準で、地震や津波対策が強化され、テロも含めた過酷事故への備えが義務付けられた。現在、8電力会社の10原発17基が安全審査を申請している。北海道電力泊原発(北海道)、関西電力の大飯原発(福井県)と高浜原発(同)、四国電力伊方原発(愛媛県)、九州電力玄海原発(佐賀県)の審査もほぼ同時期に始まったが、川内原発がその中から抜け出したのは“談合破り”を決断したからだ。

●九電の“談合破り”

「ちょっと乱暴なところもあるが、エイヤっと大きくしました」。九電幹部は規制委の審査会合で、川内原発の地震想定を大幅に引き上げる方針を表明した。規制委の事務局である原子力規制庁の審査官は「御社の哲学、思想が見えて安心した」と評価。川内原発の優先審査入りが事実上決まった。

 昨年7月に施行された新規制基準は東電福島原発事故を踏まえ、科学的に考えられる最大規模の地震、津波対策を求めたが、想定を引き上げると追加の耐震工事が必要になるため、電力会社は引き上げを渋った。そこで電力各社は、電力中央研究所で想定の見直しを行い、その数値を規制委に報告することにした。これがいわゆる「地震想定談合」と呼ばれるものだ。しかし、この想定値が規制委の了解を得られなければ、審査はストップする。

 九電は規制委の意向に沿って最大の地震の揺れ(加速度)を540ガルから620ガルへと引き上げたが、その理由を同社幹部は「すべて(規制委に)反論していたら再稼動が遅くなる」と説明しているが、背景には同社の厳しい財務体質があったとみられている。

●忍び寄る債務超過の危機

 原発への依存度が高かった九電の14年3月期連結決算における最終損失は、1250億円の予想であり、3期連続の赤字になる。過去の利益の蓄積である利益剰余金(単体)が、3月末にゼロになる見通しだ。火力発電用の代替燃料費がかさみ、九電は昨春、企業向けで11.94%、家庭向けで同6.23%の値上げを実施したが、値上げ後も大幅な赤字が続くのは、原発の早期再稼動を見込み、値上げ幅を縮小したからだ。

 2月中旬、北電は電気料金の再値上げを申請したが、昨年9月に値上げをして半年もたたないうちの再値上げだ。同社の川合克彦社長は「債務超過の可能性も否定できない」と語った。

 一方、九電の瓜生道明社長も「(再値上げの)検討を進めざるを得ない」と説明しているが、値上げを申請してもすんなり認められる保証はない。原発の再稼動が進まず、再値上げもままならないとなると、経営が傾きかねず、それこそ北電同様に債務超過という事態が現実味を帯びてくる。これが“談合破り”を決断した最大の理由といわれている。

 ちなみに九電は、今夏までに川内原発の2基(合計出力178万キロワット)が再稼動すれば、夏の電力需要の1割程度は賄えると計算している。

BusinessJournal編集部

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