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電力小売り自由化、なぜ異業種から参入続々?携帯、石油、外食…各社“武器”を活用

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ソフトバンク本社が所在する東京汐留ビルディング(「Wikipedia」より/Jo)
 電力小売りの全面自由化が、いよいよ現実味を帯びてきた。政府は、2016年に電力小売りを全面自由化することを柱とする電気事業法改正案を閣議決定した。通常国会での成立を目指す。大手電力会社の地域独占となっている一般家庭や商店向け電力の小売りを自由化することで、消費者は料金やサービスを比較して他地域の電力会社や新規参入組を含めて購入先を選べるようにする。既存の電力会社や自民党の一部は、「原子力発電所の再稼動がないまま自由化すれば、電力の安定供給が守れなくなる」と全面自由化を牽制している。

 経済産業省が電力各社の家庭向け収入から算出したデータによると、全面自由化によってテレビやスマートフォン(スマホ)市場にほぼ匹敵する7.5兆円分の市場が新たに生まれる。新規参入組には、またとない大きなビジネスチャンスなのだ。新規参入組の大きな特徴は、家庭に食い込む武器を、それぞれ持っていることだ。

●携帯電話とセット契約を狙う、ソフトバンクとKDDI

 まず動いたのが携帯電話業界だ。ソフトバンクは電力小売り業に参入し、手始めに工場やマンションなど大口需要家向けの販売に乗り出す。16年をめどに家庭用電力販売に進出する予定で、太陽光や風力で発電した電力を販売する。子会社のSBエナジーが全額出資するSBパワーが、経済産業省に新電力(特定規模電気事業者:PPS)として届け出た。SBエナジーは各地で大規模太陽光発電所(メガソーラー)や風力発電所の建設事業に取り組んでおり、15年度末までに総出力で30万キロワット規模になる。SBパワーの最大の強みは、携帯・固定通信の契約を5000万件保有しており、すでに料金回収の仕組みを持っているため携帯電話料金と一括して請求でき、セット割引も検討する。

 KDDI(au)は子会社のケーブルテレビ(CATV)・ジュピターテレコムを通じ、CATVやインターネット回線と電力のセット販売を、関東や関西のマンション向けに展開している。16年には家庭向けにも同様のサービスを始める。

 携帯電話・スマホという強力な武器を持つソフトバンクやKDDIは、自社の携帯電話とセット契約で囲い込みを狙う。小売り参入を狙う総合商社などにはない強みだ。

●ガソリンスタンドを販売拠点として参入するエネルギー各社

 ガソリンスタンドという販売拠点を持っているエネルギー業界にとっても、またとないビジネスチャンスだ。

 石油元売り最大手のJXホールディングスは傘下のJX日鉱日石エネルギーが火力発電所の新増設を進め、発電規模を30年までに現在の3倍に増やす。家庭向け電力の販売拠点として、全国1万1000カ所のガソリンスタンド「ENEOS」を活用。電力販売を新しい収入源として、全国のガソリンスタンド網を維持する。

 大手商社の伊藤忠商事は、子会社の新電力・伊藤忠エネクスが家庭向け電力小売りに参入する。東北など2カ所に石炭火力発電所を新設するほか、既存の火力発電所も増設。投資額は500~600億円の見込みで、他社からの電力調達も含め販売電力量は3年後に10倍の10億キロワット時に引き上げる。伊藤忠は家庭向けの液化石油ガス(LPG)で100万世帯の販路を持つ。併せて2200カ所の系列ガソリンスタンドの販売網を活用して顧客を開拓する。