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ソニー、なぜ“緩慢な自殺”進行?パナとの明暗を分けた危機感の欠如と、改革の学習経験

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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ソニー、なぜ“緩慢な自殺”進行?パナとの明暗を分けた危機感の欠如と、改革の学習経験の画像1ソニー本社(「Wikipedia」より/Shuichi Aizawa)
 2014年3月期、ソニーパナソニックの業績は大きく明暗が分かれた。ソニーは、13年10月、14年2月、同5月と3度にわたる下方修正の末、売上高7兆7672億円、純利益1283億円の赤字に対して、パナソニックは13年10月に上方修正の後、売上高7兆7365億円、純利益1204億円の黒字だ。

 なぜ、両社の業績は、これほど明暗が分かれたのか。その理由の一つとして、両社社長の経営手腕の差が指摘されている。パナソニック社長の津賀一宏氏は、就任直後から聖域とされた本社機能に大胆にメスを入れ、B2B(企業間取引)への事業戦略の転換、事業部制の復活、プラズマテレビからの撤退など、次々と改革の矢を放ってきた。業績回復の背景には、車載と住宅事業の健闘がある。

 ソニー社長の平井一夫氏は、スマートフォンやタブレットなどのモバイル、カメラやイメージセンサーなどのイメージング、ゲームの3事業を中核事業と位置付けた。しかし、3事業とも競争が激しく、結果を出すのは容易ではない。米国本社ビル、旧ソニーシティ大崎など、次々と資産売却を繰り返してきた。結果、13年3月期決算では5年ぶりに黒字化を果たした。しかし、それは所詮売り食いに過ぎない。その証拠に、14年3月期は再び赤字に戻った。15年3月期について平井氏は、5月22日に開かれた経営方針説明会の席上、次のように語った。

「中期目標には遠く及ばず、徹底した構造改革を進めることとなり、500億円の最終損失となる見込みです」

 翌16年3月期には4000億円の営業利益を見込むが、その実現を疑問視する声は多い。それも当然といえよう。他社に比べ、事業の選択と集中が遅れた。パソコン事業の売却、10年間赤字を垂れ流してきたテレビ事業の分社化を発表したのは、今年2月だ。本社改革がスタートしたのも、平井氏の社長就任から2年を経た今年4月である。

 もとより、経営者の手腕の差が、両社の業績の明暗を分けたすべての理由ではないのは確かである。企業体質を含めて、分析する必要があるだろう。

 私は、ソニーとパナソニックの業績回復力の差について、両社の「改革」に対する危機感の差に注目したい。

●パナソニックの危機感

 よく知られるように、パナソニックは旧松下電器産業時代、バブル崩壊後に経営不振に陥り、02年3月期には純利益4310億円の赤字を計上した。窮地を救ったのは、00年に社長に就任した中村邦夫氏の「中村改革」である。中村氏は「破壊と創造」という強烈なメッセージを掲げ、「幸之助の経営理念以外、すべてを見直す」と公言して大改革に乗り出した。01年には幸之助が1933年に導入した事業部制の廃止に踏み切ったほか、研究・開発・設計体制の改革、セル生産の導入、在庫削減、コストダウンなどの構造改革を矢継ぎ早に行った。

 私は当時、パナソニック関係者を多く取材したが、社内からは強烈な危機感が感じられた。なかには「本当に潰れるかもしれない」と口にする者もいた。組織の末端にまで危機感が行き渡っていた。その点、パナソニック社員はソニーに比べて泥臭い。改革に愚直に取り組み、痛みに耐えた。

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