「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/6月14日号)は『IPO&新興市場を勝ち抜け』という特集を組んでいる。「株式相場が好転してきた。中でも上げが目立つのは新興市場だ。IPO(株式新規公開)では大型銘柄の登場が相次ぐ。今後個人投資家が勝ち抜く手法とは何か。IPO&新興市場の投資戦略を伝授しよう」という内容だ。
軟調な展開が続いていた株式相場だが、とくに新興市場では、5月中旬から風向きが変わってきた。スマートフォン向けゲームが好調なミクシィが、5月19日からの2週間で株価は9割も上昇。売買代金はトヨタ自動車を上回る大商いが続いた。このため、東証マザーズ指数は、5月19日を底に2週間で3割も上昇したのだ。
また業績も好調だ。新興4市場(ジャスダック除く)に上場する企業の今期(2014年4月期~15年3月期)の前期比営業増益率は2.4倍。東京証券取引所1部に上場する企業が、消費増税の影響などで同7.7%増にとどまるのとは対照的だ。
●活気づくIPOに潜む危険
さらに活気づいてきたのがIPOだ。06年のライブドア事件後に急減したIPOの企業数が昨年には54社まで増加している。今年に入ってからも3月のジャパンディスプレイ、4月の西武ホールディングスと大型IPOが続き、6月には新世代のネット企業を中心に7社がIPOを行う予定になっている。
特集記事『Part1 IPOの虚実 これから出てくる大型上場』によれば、株式市場はこれから数年、空前の大型上場ラッシュを迎える。10月にも東証1部に直接上場すると予想されるリクルートホールディングスや、今秋といわれるLINE、来春上場する方針の日本郵政。数年内の上場を目指す東京地下鉄(東京メトロ)に、九州旅客鉄道(JR九州)などの名前も挙がってくる。
しかし、ジャパンディスプレイの上場に見られるように、政府系民営化案件には注意が必要だ。IPOでは出資していた政府系ファンドの産業革新機構が保有株の約半分を売却、出資額の約8割を回収し、700億円のキャピタルゲインを手にするなど、政府系機関の資産売却の面が強い。それを嫌った機関投資家の引き合いが弱く、結果として個人投資家が手に入れるものの、売り出し価格である「公募価格」から下回ったままの含み損株式になっているのだ。「上場まもない4月に業績予想を下方修正したのも、投資家の心理を冷やした」「ジャパンディスプレイ株の値下がりは個人の投資意欲をそぐ結果となった」(同記事)
●チェックポイントは社員の給与
特集記事『これだけは外せない 投資の心得』では、アナリストがIPO株の見極めポイントとして以下の「IPO投資の3カ条」を指南している。
1.初値は需給で決まる。公開規模はもちろん、VC(ベンチャーキャピタル)保有株数をチェック。
2.事業に独自性があるか。利益率や従業員給与額はその表れ。
3.株価はいずれ理論値に集約される。株価収益率(PER)など、バリュエーションをチェック。
中でも、「2.事業に独自性があるか。利益率や従業員給与額はその表れ」に関しては、根強い人気があるインターネット関連で注意が必要だ。