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小笠原泰『生き残るためには急速に変わらざるを得ない企業』(9月7日)

分裂する米国と中国、極度に相互依存する覇権なき世界…企業は生存率をどう高めるのか

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

 つまり、(1)の要件である飛びぬけて強力な国家を前提にし、かつ、存在意義と力のある国民国家を前提にした国際社会でない。むしろ、強力なヘゲモニー(覇権)は存在せず、存在意義と力の低下した国家が集合した、強度に結合し相互依存した世界を迎え、これまでの国家を一義に前提と置くパラダイムを転換しなければならないのだ。これまでの前提であった、政治家の望む、国家主導の国家と企業と個人のインタレストの三位一体はもはや機能しない。グローバル化する社会で各々が異なるインタレストをもって行動することになる。極論を言えば、国家という存在は、もはや、個人や企業に対して優位に立つ存在ではなく、同列化しつつあるのである。

●技術革新と融合したグローバル化がもたらすビジネスにおけるパラダイムの変化

 国家の存在意義と力の相対的かつ絶対的低下をもたらす、技術革新と結合した現在のグローバル化は、人類に選択権のある進歩ではなく、人類が自らつくってしまった選択権のない環境適応としての進化環境であると考えたほうが、個人も企業も国家も適応率・生存率は高まるのではないか。情報通信技術の発展を核とする技術革新と融合した加速化するグローバル化がもたらすパラダイム転換を示唆する、以下の3つのキーワードを理解することは、企業と個人の生き残りにとって大きな意味を持つ。

(1)Beyond boundary(これまでの境界や常識は通用しない)
(2)Acceleration(変化は加速度的に速くなる)
(3)Leverage(小さな力で大きなものを生み出せる)

 次回は、この3つのキーワードについての論を進めてみたい。
(文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授)

【註1】ヘゲモニー(覇権)
 国際社会におけるヘゲモニー(覇権)とは、特定の勢力が長期にわたり、最優位な地位(権力の掌握)を安定的に維持していることを意味する。歴史的には、覇権を得る過程は、合意によるものではなく、相対的に武力、政治力、経済力において優位な立場にある勢力が、それらのパワーの行使によって、敵対的立場にある勢力を服従させ、最優位の立場に立つことであるとされる。覇権は、被支配者の「同意に基づく」支配を強調した統治体系という理解が一般的であり、軍事支配とは異なる。この意味で、ヘゲモニー(覇権)は、世界を安定化し、拡大化する方策として有効な手段であるため一概に否定すべきものであるとはいえない。

小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

1957年生まれ。東京大学卒、シカゴ大学国際政治経済学・経営学修士。McKinsey&Co.、Volkswagen本社、Cargill本社、同オランダ、イギリス法人勤務を経てNTTデータ研究所へ。同社パートナーを経て2009年より現職。主著に『CNC ネットワーク革命』『日本的改革の探求』『なんとなく日本人』、共著に『日本型イノベーションのすすめ』『2050 老人大国の現実』など。
明治大学 小笠原 泰 OGASAWARA Yasushi

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