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ANA、なぜJAL抜き悲願のトップ目前?政権の意向に左右される航空業界の特性露呈

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ANAの航空機(「Wikipedia」より/Kentaro Iemoto)
 国を代表する航空会社、いわゆるナショナル・フラッグ・キャリアの座が日本航空(JAL)から全日本空輸(ANA)へ移ったことを象徴する出来事があった。

 政府は8月、次期政府専用機に米ボーイング「B777-300ER」を採用し、機体の整備業務をANAホールディングス傘下のANAに委託することにした。タラップにはANAのシンボルカラーである青色が使われる。政府専用機は天皇陛下や首相らの外国訪問に使われる。現在、運航されているのは「B747-400」2機で、機体の整備や手荷物の積み込み、燃料給油からケータリング(機内食の提供)までを一貫してJALが担当してきた1993年の導入から20年以上が過ぎ、現行機の老朽化が目立ってきたことから、政府は後継機を検討してきた。機種や整備委託先を募集すると、JALとANAがそれぞれB777-300ERを柱に提案書を出した。最終的に国内で同機種を多く保有し、経費を安く抑えられる点などを評価し、ANAの提案を採用したというのが公式見解だ。

 だが、「安倍晋三政権のANA贔屓が背景にある」(航空業界筋)というのが、業界の共通した見方だ。JALが10年1月に経営破綻した際に民主党政権は3500億円の公的資金を投入したほか、法人税の減免、銀行による5200億円に上る債権放棄という異例のバックアップ体制を敷いた。JALの焼け太りを恐れるANAは、当時下野中の自民党と組み、反JALキャンペーンを展開した。安倍政権の誕生で、航空界の主導権は「民主党・JAL」から「自民党・ANA」に移った。

 国土交通省は3月、羽田空港の国際線の新たな発着枠配分で、ANAに1日11便、JALに5便と露骨な傾斜配分を行った。「民主党政権が主導したJAL再建に批判的な、自民党の意向が働いた」(同)とみられている。自民党内には「16枠全部をANAに渡すべきだ」という極端な意見まであったという。

●ANA、旅客数大幅増


 こうした「ANA優遇、JAL冷遇」は、両社の旅客数の差に如実に表れている。お盆休み期間(2014年8月8日~17日)の利用実績をみてみよう。国内線の旅客数はJALが前年比4.6%減の104万人。対するANAは4.8%減の145万人。ともに前年を下回った。差がついたのは国際線である。旅客数はJALが1.4%増の27万人でANAは11.9%増の24万人。ANAが旅客数を大幅に増やした。

 方面別の旅客数をみると、JALはオセアニア(8.5%増)、東南アジア(7.4%増)が伸びたが、韓国(9.2%減)と台湾(4.2%減)は前年を下回った。一方、ANAは欧州(28.5%増)、北米(24.9%増)、中国を除くアジア(14.6%増)が大きく増加した。主力路線の中国(1.6%減)は前年を下回ったとはいえ、ANAは羽田空港の発着枠が増えたことが、旅客数の増加に直結した。14年上半期の国際線の旅客数では、JALが前年比2.5%増の378万人。ANAは11.0%増の326万人と激しく追い上げた。

●重要指標でANAがJAL逆転か?


 次に、航空会社の実力を測る指標である輸送能力を表す「座席キロ」(座席数×飛行距離)と、売上高に直結する「旅客キロ」(旅客数×飛行距離)をみてみると、羽田増便により異変が生じた。ANAの国際線の座席キロは4月、86年に国際線定期便を就航させて以来、単月で初めてJALを上回った。上半期累計ではJALが2.2%増の231億座席キロ、ANAは16.6%増の227億座席キロとなり、わずかにANAは届かなかった。