7月、マクドナルドにも商品提供していた中国・上海の食肉加工会社が、期限切れの食材を偽装して出荷していた事件が大きく報道された。これを受け、同社のサラ・カサノバ社長は記者会見で「事件に憤りを感じる」と述べ、被害者としての立場を強調した。しかし、この姿勢には一般の顧客だけでなく、全国の店長からも本部へ批判が多数寄せられた。
代金誤徴収の問題も、本部が販売価格を急に変更したために発生したものだった。その事情を同社関係者は次のように明かす。
「7月以降、鶏肉を使った商品を中心に売り上げが急落したため、マクドナルドは8月下旬に値下げを決断しました。全国の店舗が値下げ価格を印刷したクーポンを大量配布するなど、事前準備をほぼ終えたにもかかわらず、値下げ開始3日前になって本部はさらなる値下げを指示しました。店舗は大混乱に陥り、すでに配布されたクーポン券と相まって、店舗内では同一の商品に対して複数の価格が混在してしまい、過剰徴収が発生したのです」
●人材の大量流出で、回復は危機的状況?
一方で、販売目標ばかりを押し付ける本部の姿勢に嫌気が差し、辞めていくベテラン店員も急増しているという。マクドナルドでは、ベテランのアルバイト店員が若い店員を教育する現場主義が徹底されてきたが、「教育係を任せられる店員がすっかり減ってしまい、本部から教育係を招く店が続出しているありさま」(同)だという。
「いま、外食チェーンでは人手不足が深刻化していて、マクドナルドで教育係をしていたようなベテラン店員の場合、他の外食チェーンが競うように雇っている。『時給3000円』という破格の条件で引き抜くケースもあると聞きます」(外食業界関係者)
マクドナルドの7~8月の売上高は、こうした迷走ぶりを反映し、前年比で2割以上も減少した。大手証券各社も同社の先行きを懸念し、株価目標を相次いで引き下げたとみられている。
こうした難局を打開するために本部がもくろんでいるのが、大規模リストラによる収益回復だと、ある店長は打ち明ける。
「リストラ計画の中には、ベテラン店員や社員の退職勧告も含まれていると聞きます。マクドナルドに今求められているのは『現場力の回復』です。しかし本部はそれを理解できず、まったく逆のことをしようとしています」
かつては「デフレの勝ち組」と呼ばれたマクドナルドだが、果たして再び輝きを取り戻すことはできるのだろうか?
(文=編集部)