ベネッセ、“実質的な”経常利益は100億以上の増加?漏洩事故で「血の入れ替え」加速
●ベネッセの業績予想は下方修正ではない
10月31日、べネッセホールディングスが2015年3月期業績予想を発表した。7月末の四半期短信では、同月に発覚した会員情報漏洩事故を受け、異例の「未定」としていた。今回発表された予想では、経常利益を約265億円としており、前期実績の350億円と比較すると一見、大幅な減額のようにもみえる。
しかし、こうした見方は誤りである。筆者は9月、週刊誌の取材で次のように述べた。
「情報漏洩事件がベネッセの業績に与える影響は一過性のもので終わるだろう。通年のグループ経常利益が半減する程度で済むのではないか」
「会員に対しての、情報漏洩関連での賠償が約250億円と発表されている。同社(ホールディングス)の近年の経常利益額はおおよそ安定して400億円前後なので、それが今期は半減するほどのインパクトはある。しかし、赤字に陥るようなことはない」
今回発表された経常利益の予想が265億円ということは、賠償支払いの250億円がなければ経常利益は500億円を超える勢いだということを示している。つまり、前年実績より100億円以上も伸びたことになる。同社の実質的な業績は伸びていると読むべきなのだ。
さらに売上高に至っては、事件の影響を受けても前期の4660億円から4670億円へと伸びる予想であり、筆者の経営者としての経験から推察するに、「大事件で世間を騒がせた後にあまり売上高が伸びると批判を浴びる恐れがあるので、少しだけ伸びるという数字に収めておこう」という同社経営陣の意向が働いたと思われる。そのため、15年3月通期の実績は、今回の予想値より上振れする可能性が高い。「事件がなければ経常利益は100億円以上伸びていたはずで、売上高は実質的に伸びた」となり、期中の6月に社長に就任したばかりの原田泳幸氏の手腕が大きくたたえられることになるだろう。
実は原田氏は、事件を契機として大胆な経営陣の入れ替えを進めており、社内では「血を入れ替える」と表現しているという。
原田氏は事件を奇貨として、今後さらに同社内での経営基盤を確立していくだろう。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)