統合後の総資産は15兆7928億円(14年3月期の合算)となり、福岡銀行を中核とするふくおかフィナンシャルグループ(14兆1259億円)を抜いて最大の地銀グループが誕生する。
東京都では、東京都民銀行と八千代銀行が10月1日に経営統合して東京TYフィナンシャルグループが発足し、東日本銀は地銀再編に取り残された格好だった。
横浜銀の寺澤辰麿頭取は「経営状態が悪くなってから、(再編を)考えるのは最悪」と述べ、経営環境が悪化する前に手を打ったと説明した。さらに「トップライン(売上高)の向上やシナジー(相乗)効果がないと(合併する)意味がない」と合併の意義を強調した。
寺澤氏は、再編を進める上で3つの要件を挙げている。(1)顧客との密接な関係の維持、(2)シナジー効果の発揮、(3)利害関係者からの理解だ。この“寺澤ドクトリン”が地銀のベストパートナー選びの一つの指針になる。
だが、今回の経営統合の実態は規模が小さく、将来生き残りが厳しい東日本銀を横浜銀が救済したかたちだ。これは従来型の「救済統合」といえる。従って、11月10日に発表された肥後銀行と鹿児島銀行の健全行同士による統合に比べて地銀業界に与えたインパクトは小さかった。
●統合の決め手は頭取の人脈?
2つのケースでは頭取の人脈が統合の決め手になった。肥後銀と鹿銀の頭取は共に慶應義塾大学の同窓生、横浜銀と東日本銀の頭取は大蔵省(現財務省)で先輩後輩の関係だった。寺澤氏は1971年、東日本銀の石井道遠頭取は74年、いずれも東京大学法学部を卒業後大蔵省に入省し、国税庁長官を務めた経歴も同じである。
寺澤氏は財務省時代から剛腕で知られ、理財局長として国債市場改革を進めた。一方の石井氏は90年代の金融危機を大蔵省で経験しており、銀行経営に厳しい問題意識を持っている。このため、両頭取が金融庁の再編要請を受け入れ、経営統合に踏み出したという見方が出ているが、東日本銀の石井氏は「金融庁から言われて協議したことはまったくない」と否定している。
統合のパートナー選びは地縁から始まる。地理的に近い地銀同士の組み合わせが頭に浮かぶが、最後には頭取の人脈が大きな影響を及ぼすことが見て取れる。