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トヨタ、過去最高益更新から見える課題は「富の配分」 下請けとの共存共栄は可能か

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トヨタ自動車「ミライ」
 トヨタ自動車は4日、2015年3月期決算の通期業績見通しを上方修正した。昨年11月の中間決算時点での見通しとの比較では、売上高が5000億円積み増して27兆円、営業利益が2000億円増加の2兆7000億円、当期純利益が1300億円増の2兆1300億円。営業利益率は10%だ。売上高、営業利益、営業利益率、当期純利益いずれも過去最高を更新する。増収増益の要因は、円安効果や北米での販売増、お家芸の原価低減によるものだ。日本のリーディング企業であるトヨタの実力からすれば、これくらいの実績を出せて当然と筆者は言いたい。持ち上げることでは決してない。

 今回の決算から見えてくる課題は、トヨタが得た富をステークホルダーにどう配分していくかだ。すでにトヨタは、若い社員への配分を強化するように賃金制度を改定する方針を示しているし、好業績は機械的にボーナスに反映する仕組みもすでにある。豊田章男社長も企業の社会的責任の第一に「納税すること」を掲げており、地域への配分について配慮する方向だ。

 ただ、トヨタの正社員の賃金ベースはもともと高いので、その社員の賃金を上げることに果たして大きな意味があるのだろうか。安倍晋三政権がデフレ脱却を狙って賃上げを求めていることに迎合し、世間受けを狙っているようにしか見られないのではないか。
 
 自動車産業は一般的に知られているように、一次、二次、三次……と多層的に下請け企業が連なるすそ野が広い産業である。下に行けば行くほど、町工場的に運営している会社もある。もともとこうした企業の賃金水準は、トヨタの半分にも満たないような会社もある。そのため優秀な人材の獲得にも苦しんでいる。こうした会社でも賃上げが行われないと、安倍政権が求めている本当の意味でのデフレ脱却はできないのではないだろうか。

 トヨタも日本の産業界のリーダーであることを自覚して、下請けへの配慮から15年度上半期の部品購入価格の改定(いわゆる値引き要請)はしない方針で、デンソーやアイシン精機など大手の系列企業もそれに追随する動きだ。

 しかし、現実は甘くない。2月3日までに、トヨタグループ大手8社の15年3月期気決算の業績見通しが出そろったが、8社中5社で最終損益が前年実績を下回ることになった。最終利益はデンソーが8%、アイシン精機が9%、豊田合成が20%、愛知製鋼が6%それぞれマイナスとなり、トヨタ紡織にいたっては最終赤字に転落する。アジアでの不振や、トヨタ以外との取引で収益性が悪化したことなどが減益となる主な要因だ。さらに、将来の競争激化を見据えての先行投資への負担も膨らんでいる。

●トヨタの増益の恩恵にあずかれない下請け


 グローバルにみると、自動車部品産業はM&Aによって「メガサプライヤー化」し、規模のメリットを追求する傾向にあり、トヨタ系といえども、規模の競争では不利になりつつある。こうした中で、下請け部品メーカーは簡単に従業員への配分を増やし、購入価格面で下位の下請けに配慮する余裕はない。そうなると結局、下位の下請けはトヨタの増益の恩恵にはあずかれないだろう。

 例外はあるものの、古くからトヨタグループでは、毎年コストダウンしていく代りに長期取引をすることで、「売上面積」で下請けに配慮してきた。また、コストダウンでトヨタに貢献した下請けに対しては、コストダウンした分の半額を「お返し」する考えもあった。たとえば、1個1000円の部品で50円のコストダウンに成功したら、25円分は部品メーカーに返して次の製品開発の再投資に向かうようにしていた。コストに厳しいトヨタから鍛えられることで、他メーカーに納入する「他流試合」で儲けることもできた。トヨタから厳しいことを言われても、それに従っていれば、自社の経営も「筋肉質」になっていたのである。要はトヨタと真剣に付き合えば損はしないのであった。トヨタの厳しい要求は「愛の鞭」的な要素があったことも事実だ。こうした仕組みが広いトヨタグループの中で「絆」のようなものを生んでいた面がある。