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いまだにFAX中心、秘密主義…謎の高収益企業と、過激派の米ファンドが全面戦争!

文=編集部
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いまだにFAX中心、秘密主義…謎の高収益企業と、過激派の米ファンドが全面戦争!の画像1富士山麓に展開するファナック本社研究所、工場群(「ファナック会社案内」より)
 物言う株主(アクティビスト)として有名なダニエル・ローブ氏が率いる米ヘッジファンド、サード・ポイントが日本株の最新のターゲットにしたのが、工作機械の数値制御(NC)装置や産業用ロボットなどを製造するファナックだ。サード・ポイントは同社に株主還元を求め、株主総会に向けて両者の攻防戦の幕が上がった。

ソニーを標的にしたサード・ポイント

 サード・ポイントが日本に注目したのは、2012年末に安倍晋三政権が発足し積極的な金融緩和策を打ち出したのがきっかけ。投資拡大のチャンスと捉え、日本に上陸した。

 13年5月、ソニー株式を保有したことを明らかにしたサード・ポイントは、ソニーにエンターテインメント事業(映画・音楽部門)を分社化して株式の15~20%を米国で上場することを提案した。ソニーは「エレクトロニクス事業とエンタメ事業は一体運営すべき」として提案を拒否した。

 しかし、エンタメ事業の情報開示を拡大したほか、パソコン事業からの撤退やテレビ事業の分社化など、赤字が続くエレキ事業の収益向上策を相次いで打ち出した。

 サード・ポイントはピーク時にソニー株式を7%程度保有していたとされるが、昨年10月までに全株売却したことを投資家に送った書簡で明らかにした。「20%近い利益を得られた」としている。

 そのサード・ポイントが、次なるターゲットに選んだのはファナックだった。

営業利益率40%の高収益会社、ファナック

 富士山麓の山中湖の近く、うっそうと生い茂る樹林の中に、秘密に閉ざされた黄色い建物が林立している。産業用ロボットメーカー、ファナックの本社工場だ。投資家への情報開示には消極的で、海外の経済メディアからは「秘密主義」と酷評されている。

 米ブルームバーグによると、コンピューターウイルスを遮断するため業務連絡はたいていファックスで行われ、電子メールはほとんどの場合、使用禁止だという。投資家向け広報(IR)部門は設置されておらず、アナリストとのミーティングや電話会議も一切行われていない。半数以上が外国人と推定されている株主との対話は、味も素っ気もない四半期ごとの決算短信に限られている。

 ファナックの業績は絶好調だ。15年3月期の連結決算(日本基準)の売上高は53%増の6882億円、営業利益は63%増の2680億円、純利益は67%増の1851億円と、いずれも過去最高を見込む。新型スマートフォン(スマホ)の金属ケースの加工に使うロボマシン事業が全体を牽引した。

 売上高営業利益率はコンスタントに40%前後、つまり、売り上げの4割は儲けという超高収益企業だ。株式時価総額は2月23日時点で5兆4000億円に上り、東証1部上場企業の第11位に位置する。日本を代表する名門企業と肩を並べているといってもいいだろう。そんな収益性の高い優良企業のファナックにサード・ポイントは勝負を仕掛けてきた。

1兆円超の内部留保の株主還元を求める

 サード・ポイントは、株主への大幅な利益還元を要求することで知られている。1月に株主に宛てた書簡でファナックの株式を取得したことを明らかにし、同社に株主還元の強化を促した。

 サード・ポイントは、「1兆円の内部留保を用いて、自社株買いを行うべきだ」と提言している。これにより、1株当たりの利益や自己資本利益率(ROE)が上がり、株価も上昇。株主への貢献になると主張している。ファナックの14年4~12月期決算時点の利益剰余金は1兆4424億円に上る。この内部留保を吐き出して、株主に還元せよと迫ったのだ。

 これに対するファナックの反応は早かった。15年2月16日、1300億円を投じ栃木県内に工作機械部品の新工場や研究棟を新設すると発表した。ファナックはサード・ポイントの要求については触れていないが、設備投資に資金を投じることでサード・ポイントが要求する自社株買いには応じられないというメッセージを発信したと株式市場では受け止めている。

 英ロイター通信によると、サード・ポイントはファナックの設備投資計画について、「資本の利用が非効率であることへの対応策にはならない」との見解を明らかにしつつ、書簡に対するファナックから直接の回答はないと語っている。

 ブルームバーグの報道からみて、ファナックとはトップ会談が開かれるかどうか疑わしく、サード・ポイントはファナックをこれまでよりも手ごわい相手だと認めているようだ。

 サード・ポイントは「ファナック最大級の株主になる」と表明したが、ファナックの現在の筆頭株主は自社(自己株口)で18.3%。外資系の金融機関名義の株主が多数存在しており、サード・ポイントの資金力で最大級の株主になるのは難しいだろう。

 いずれにせよ、株主総会に向けてサード・ポイントとファナックの攻防が激化するのは間違いない。
(文=編集部)

【続報】
 ファナックが株主との対話路線に転換する。4月に株主との対話窓口となる部署「SR(シェアホールダー・リレーションズ)部」を設け、増配や自社株買いを検討する。SR部には担当役員を置き、国内外の機関投資家と「建設的な対話を行う」。稲葉善治社長が日本経済新聞でのインタビューで答えた。米投資ファンド、サード・ポイントが株式を取得したと公表し、手元資金を活用して自社株買いをするよう求めたのが発端だ。ファナックは「サード・ポイントが株主かは確認できていない。確認できれば対話をする」としている。

 3月13日、東京株式市場でファナックの株価が過去最高の上げ幅(3515円高、15%高)を記録。上場来高値を更新して2万7250円まで上昇した。終値は2万6870円(3135円高、13%高)だった。週明けの3月16日はさすがに下げ、165円安の26705円で終わった。ファナック株式に対する投資家の買い意欲は強い。

 ファナックは株主から意見を聞き、2015年3月期決算の発表時点で株主還元策を公表する見込みだ。市場には自社株買いより配当を増やしてほしいとの要望が多いようだ。株式時価総額は株価の急伸で6兆4355億円となり、日産自動車を抜いて東証1部のベスト10に入った。増配する場合、配当性向を現在の30%前後から、どこまで引き上げるかに関心が集まる。配当性向40~50%を期待する声が出ている。もう一つの焦点はサード・ポイントのダニエル・ローブ氏がファナック株式をどのくらい保有しているかだ。ローブ氏は現在までのところ保有している株数や投資額を明らかにしていない。

BusinessJournal編集部

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