だが、事態がこれで収束するかといえば、どうやら違う。「二頭体制で長続きするはずはない」と語るのは元社員だ。勝久氏は町の桐ダンス販売店から身を興し、一代で大塚家具を株式公開企業にまで育てた創業者。社内では超ワンマンで知られている。一方、娘の久美子氏は一橋大学を出て銀行に総合職として務めた才媛で、理論詰めの議論では勝久氏もかなわない。
勝久氏は不祥事をきっかけにいったんは社長を久美子氏に譲ったものの、久美子氏のやる事なす事すべてが気にくわず、それが昨年7月の突然の社長解任につながったというのだ。「実の娘といえども俺に逆らえばクビ」というワンマン会長ぶりを社内に見せ付けることになったわけだ。その後、久美子氏側が反撃に出て今回の社長復帰となったのだが、そんなまったく反りの合わない2人が、ともに代表取締役に就いた。元社員によれば、「二人三脚など絶対にあり得ない」というのだ。
実は、2人の対立が激しくなるにつれて、勝久氏のワンマンぶりは激しさを増していった。自分の言うことに逆らったり、久美子派と見なした幹部社員は、毎日のように激しい言葉の暴力に晒されるようになったという。そのパワハラぶりは半端ではなく、実際に心身症になったり、追い詰められて会社を去った人もいる。
今でも社員はまったく勝久氏には逆らえない。久美子氏が社長に復帰したといっても、勝久氏が会長にとどまる限り、社員は会長の言うことを聞く。それぐらい会長を「恐れている」というのである。勝久氏が実質的に引退して社長である久美子氏が全権を握ったことが明らかにならなければ、社員は怖くて久美子氏の言うことを聞けない。再度久美子氏が失脚すれば、久美子氏に協力的だった社員がパワハラの対象になるのは明らかだからだ。
●久美子社長の心配
久美子氏がしきりに「コーポレートガバナンス(企業統治)」と口にするのも、勝久氏のワンマンぶりに歯止めをかけないと、パワハラ問題の表面化によって大塚家具の信用が失墜しかねないと考えているからだ。パワハラで辞めた元社員が訴訟を起こしでもしたら、会社のイメージはガタ落ちである。消費者に直接商品を販売する会社にとって、イメージ悪化は死活問題になりかねない。