セブンやローソン店員、万引き犯にヘッドロックや頭髪づかみ?体を張る理由

2月にX(旧Twitter)上に投稿されたとみられる、セブン-イレブンの店舗スタッフが、逃げようとして抵抗する万引き犯を体を張って捕まえ、床に押さえつけてヘッドロックをしたり頭髪をつかんだりして警察が来るのを待つ様子を収めた動画。SNS上では「相手は万引き犯なので対応は適切」「やり過ぎではないか」と議論を呼んでいるが、セブン&アイ・ホールディングス(HD)はBusiness Journalの取材に対し、「弊社として本事案およびSNSでの取り上げについて把握をしておりますが、詳細については、当該店舗から警察に対して被害届が提出されていることも鑑み、回答を差し控えさせていただきます」と説明する。このほか、ローソンの制服を着た店員とみられる人物が、万引き犯を取り押さえて腹部を足で踏みつけて顔にビンタをしたり、頭髪をつかんだりする様子を収めた動画も広まっている。実際にローソンの店舗で発生した事象なのかどうかについて、ローソンは「調査中です」と説明するが、コンビニでは店員に対して、万引き犯を確保するよう指導などは行われているのか。また、動画にみられるような店員による体を張った行動というのは、なぜ生じるのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。
国内における万引きによる被害総額は年間8000億円以上に上るともいわれ(Idein株式会社の試算・発表による)、全国に5万店以上あるコンビニにとっても万引きによる被害は少なくないとみられる。一般的にコンビニ店舗では、万引き犯への対応についてスタッフにはどのように指導されているのだろうか。ローソン本部は次のように説明する。
「万引きを発見した場合、お客様と従業員の身の安全を第一に行動するよう指導しています。万引きを現認した場合は、原則として速やかに警察に連絡し、その後は警察と協力の上、対応します」
では、前述の動画のように、スタッフと万引き犯が激しくやり合うという事態は、なぜ起こるのか。大手コンビニチェーン関係者はいう。
「店員を雇用するフランチャイズ(FC)店舗としては、店員に負傷されたりすると非常に困るため、基本的には万引き犯を含む強盗犯に対しては『抵抗しないで』という指導になります。ですが、全てのスタッフにそのような指導が徹底されているわけではないですし、人間は非常事態に陥ると恐怖心から興奮状態や混乱状態になってしまうものなので、身の危険をおかしてでも犯人を捕まえようとする人もいるでしょう。そして、そのこと自体は責められるべきでもないと思いますが、やはりコンビニのFC店舗や本部としては、とにかくスタッフの身の安全が第一ですし、コンビニの万引きですと被害金額は数十万円になったりもせず、たかがしれているので、わずかな金額のためにスタッフに大ケガをされるというのは避けたいところだとは思います」
コンビニにおける万引き対応の難しさ
当サイトは2月17日付記事『コンビニ店員が万引き犯を足で踏みつけてビンタ…対応の難しさと根深い問題』でコンビニにおける万引き対応の難しさについて報じていたが、以下に再掲載する。
――以下、再掲載(一部抜粋)――
インバウンド(外国人訪日客)の増加に伴い、組織的な窃盗犯も増えていると伝えられている。昨年10月、ユニクロで万引きを繰り返したとして、大阪地裁はベトナム国籍の女2人に懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。2人は同年1月、わずか1週間のうちに、たて続けに大阪や京都のユニクロ店舗で146点、約35万円相当を盗んだという。盗んだ商品はベトナム国内で転売する目的だったようだ。同年2月には、ベトナム人男女4人が福岡市の商業施設にあるユニクロ店舗で衣料品87点、およそ35万円分の商品を盗んだとして福岡県警に逮捕された。調べによると、2018年から23年までの間、ユニクロ以外にも関東や関西のさまざまな店で犯行を繰り返していたことが判明しており、少なくとも66回の犯行が確認されている。大阪市内などのユニクロで万引きを繰り返したベトナム人グループの女3人を同年2月、大阪府警が窃盗容疑で現行犯逮捕。短期滞在ビザで来日し、東京や関西の延べ37店舗で約3300点、約1230万円相当を盗んだという。このほか、ドラッグストアでも複数人の外国籍の犯人からなる窃盗団による被害が増えていると伝えられている。
警視庁が令和元年に発表した万引きに関する調査研究報告書「小学生の万引きに着目した意識調査及び万引き被疑者等に関する実態調査」によれば、コンビニにおける万引きの被疑者としては若年層の割合が非常に高いのが特徴であり、万引きの誘引としては「店員が少ないこと」が多いという。
店員の安全が最優先
コンビニ店舗が被る万引き被害はどれほどなのか。元ローソン・バイヤーで消費経済アナリストの渡辺広明氏はいう。
「以前はコンビニでの万引きの約9割は『内引き』と呼ばれる内部不正、つまり店員によるものだといわれ、顧客など外部によるものは少なかったです。店舗内には多くの監視カメラが設置されており、金額的にも少額の商品が大半のため、他の形態の小売店と比較すると万引き犯のターゲットになりにくいという面があるのかもしれません」
万引きは窃盗罪に該当する立派な犯罪であり、刑法では10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処すると定められている。一般的にコンビニチェーンの本部は店舗に対し、万引き犯に遭遇した場合はどのような対応を取るよう指導しているのか。
「店員が犯人を捕まえようとするとケガを負うリスクがあるため、店員の安全を最優先に考え、基本的には追いかけたりしないように指導していると思います。レジに備えられている犯人追跡用のカラーボールも、投げつけて反撃を受ける危険もあるので、積極的に使用するようには指導していないのではないでしょうか。レジの金銭を強盗されるような犯罪でも、わずか数万円のために店員の身を危険にさらすわけにはいかないので、基本的には抵抗しないという対処になります。一般的に店舗は強盗被害については保険をかけていることも、こうした対処が取られる理由としてはあるかもしれません。
また、特定の店舗で常習的に万引きを行う犯人がいる場合には、警察と連携しつつ店員の間で情報を共有しながら、来店時に警戒したり、監視カメラをチェックしたりして逮捕につなげるといった対応になるでしょう」(渡辺氏)
(文=Business Journal編集部)