減資は株主総会の決議が必要
ゴールデンウィーク明けの5月9日。「シャープが1218億円の資本金を1億円に減らすことを検討している」と報じられ、この衝撃的なニュースは全国を駆け巡った。減資の狙いは、資本金を取り崩して累積した損失の穴埋めに充てるためだ。また法人税法上、資本金1億円以下の企業は中小企業として扱われ、外形標準課税を免れるなど優遇措置がある。つまり、一石二鳥を狙った奇策なのだ。
連結売上高3兆円、従業員5万人規模の大企業の減資は過去にあまり例がないため、シャープ株を保有している株主が不安になったのも無理はない。週明けの5月11日午前の東京株式市場でシャープの株価は一時、値幅制限いっぱいのストップ安(80円安)まで急落した。終値は前営業日比68円安(26%安)の190円で取引を終えた。取引高は3億2800万株と前営業日に比べて300倍を超えた。さらに、14日に発表した「中身がぺらぺら」(外資系証券会社のアナリスト)との批判が集まる中期経営計画が失望売りを誘い、株価は一段と落ち込み、160~170円台で推移している。
99%以上の減資という奇策に、宮内洋一経済産業相は12日の閣議後の会見で「違和感がある」と不快感をあらわにした。周囲の声に押されて1億円への減資は断念し、計画を5億円に変更したが、減資で累積赤字を一掃する狙いに変わりはない。
大幅減資は、シャープの株主にどんな影響を与えるのか。
1218億円の資本金を5億円に減らすと、1213億円が剰余金に移行する。なぜ資本金から剰余金に移すのかというと、資本金のままでは制約が多く自由に使えないからだ。シャープは1213億円を剰余金に移して、累積赤字の解消に使うことにした。
日本航空のように破綻処理されると、100%の減資が行われる。この場合は既存の株式の価値はなくなるが、シャープの減資だと、株主の保有株数はそのままで株式の価値は残る。減資をする場合、同時に増資に踏み切ることもよくあるが、そうすると1株当たりの価値が薄まる。株式の価値が損なわれれば、株主には損害を与えることになる。したがって、減資を行うには株主総会での決議が必要になる。中計を遂行する上での最初のハードルは、減資について株主に賛成してもらうことだ。否決されたら中計そのものが空中分解してしまう。