シャープの2015年3月期業績予想は市場予測を裏切り再び大幅赤字に転落するなど、不振を極めている。関係者によると、そんなシャープの中小型液晶事業を、政府の後押しによって日立製作所やソニーなどの液晶部門を統合させたジャパンディスプレイ(JDI)に合流させる案が浮上しているというのだ。
シャープの15年3月期連結最終損益は、約300億円の赤字を計上する。中国のスマートフォン市場向け中小型液晶事業が販売不振に陥ったことが主たる要因だ。市場予想では300億円の黒字が見込まれていたが、「昨年度の黒字回復は、リストラによる一時的なものだったことがはっきりした」(業界関係者)。業績悪化を受け、「経済産業省はシャープ再生の切り札として、シャープの中小型液晶事業を分離し、JDIと統合させる再編案をまとめた。すでに水面下での折衝を開始している」(同)という。
JDIは、構造的赤字に陥った日立、ソニー、東芝の液晶子会社が統合して12年に事業開始した文字通り国策会社である。政府などが出資する官民ファンドの産業革新機構が大株主となり、「日の丸液晶」の存続に向けて鳴り物入りで誕生した経緯がある。昨春には株式上場を果たしたものの、その後は業績低迷を続けた。ようやく昨年秋から回復したが、それは皮肉にも「中国市場でシャープの顧客層を奪って売上高を伸ばしたことによるもの」だったと、業界関係者が明かす。
「経産省は当初、JDIがシャープの中小型液晶事業を数千億円で買収するスキーム案をシャープ側に提示したということです。シャープはこの案を拒否したといい、現在はシャープが同事業を子会社化し、そこにJDIが過半数を出資するスキーム案を軸に交渉が進められている模様です」
ただ、中小型液晶事業を高値で切り離したとしても、問題はシャープにその後の成長事業が見つかっていないことである。当面の不採算事業を切り離しただけでは、経営再建につながるとは言い難い。
「シャープ凋落の端緒となったテレビ向けの大型液晶工場は子会社化し、すでに台湾企業の出資を受けています。円高で海外に生産移管した電子レンジなど白物家電、太陽電池事業も円安の進行で採算が悪化しています。液晶をJDIに移管した日立や東芝は他の事業で業績を回復させましたが、シャープには液晶に代わる柱が存在しないのです」(業界関係者)
シャープに残された時間は長くない。
(文=編集部)