TPP、語られぬ「毒素条項」の恐怖…国民の健康を脅かし、米国企業の金儲けを保護
先月5日、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉が大筋合意に至りました。
今回の合意に至るまで、日本の甘利明経済再生担当大臣が、米国をはじめとする参加国相手に徹夜でタフな交渉をしているかのようにメディアは報道してきましたが、これはTPPに反対する農家や国民向けのポーズにすぎません。米国主導で一方的に押し切られてきた出来レースというのが、TPP交渉の実態です。
TPP交渉は、参加国の国民にも内容を知らせない秘密主義を原則として推し進められるという非常におかしな性格の協定ですから、日本政府が米国に押し切られたことは、いずれすべての条文や付属文書が国会審議で明らかとなり、証明されるでしょう(ただし、発効後も4年間は細かい交渉文書類については守秘義務があります)。
もちろん国会では、その内容について紛糾が予想されますが、自民党と公明党で衆院議席の3分の2以上を占めていますから、なんなく日本では批准されるでしょう。
誤解されている方も多いのですが、日本は全品目平均の関税率でさえ、すでに米国やEUと比べても低い、世界的にも「自由貿易」の進んだ開かれた国なのに、なぜ米国の言いなりになってTPPを推進するのか、本当に不可解千万なのです。
このままいくと、TPPは2年を待たずして日本では批准されるでしょうが、むしろ危ういのは米国議会のほうです。大統領選挙も挟んで米国議会はあれこれ利害が衝突して紛糾必至だからです。どの参加国でも反対派が多いのですから、こんなおバカな協定はやめてしまえばよいのにやめられないのは、米国政治が多国籍大企業によって動かされているからにほかなりません。
米国政治は多国籍大企業のために動く
米国では、有権者である国民の多数決で政治が動くのではなく、膨大な政治献金を背景とするロビー活動で、参政権を持たない多国籍大企業が賄賂で米国政治を動かしています。
もちろん、日本の輸出大企業と政府も似たり寄ったりの構図です。その中心役の経団連加盟1329社の役員陣の出身企業名を見ておきましょう。会長は東レ、副会長はアサヒグループホールディングス、東京海上日動火災、新日鉄住金、トヨタ自動車、日立製作所、JXホールディングス、NTT、野村証券、日本生命、三菱東京UFJ銀行、三菱重工、住友化学、三井物産、日本郵船の出身者です。こうした名だたる大企業がTPPの焚き付け役となって、政治を動かしてきたわけです。
利益拡大を目指して、政治献金という名の賄賂で政治家を飼い殺しにして、日本政府を動かすわけですから、そこには有権者である国民の意向などは反映されません。政治家は選挙の時だけ調子のよいことを言って、国民を騙しておけばよいことになります。