厚生労働省が2014年度の輸入食品監視統計を発表した。そこで明らかになったことは、輸入食品の検査率がなんと8.8%と10%を大きく下回り、02年度以来最低の検査率になったことである。08年度の12.7%から6年間で3.9%も検査率が低下したのである。その低下率は30.7%にも及ぶ。
その原因を探ると、輸入食品の届出件数は08年度の182万1269件から14年度は221万6012件と21.6%増加しているのに対して、検査件数は、08年度の23万1638件から14年度の19万5390件と逆に15.7%も減少しているのである。輸入食品の輸入件数が急増しているのに対して検査件数を減少させているのであるから、検査率が急減するのも当然である。
政府が行っている輸入食品検査である行政検査率の推移を見てみると、これも08年度の3.1%から14年度2.6%と落ち込んでいる。驚くべきことに、数値は公表されている輸入食品監視統計で、1975年以来39年間で過去最低の検査率なのである。要するに、国の輸入食品検査体制が、輸入食品の輸入件数の急増に追いついていないのである。行政検査件数は03年度の約7万件から14年度の5万7446件まで落ち込んでいる。
このような状況のなかで、日本は関税撤廃率95%にも及ぶTPPの批准をしようとしている。現在の輸入食品数量(重量ベース)の内、TPP加盟11カ国からの輸入数量は、実に61.8%にも上る。現在の輸入食品の6割がTPP11カ国からの輸入なのである。その輸入品の関税が95%撤廃されるのであるから、輸入が急増することは明らかである。現在でさえ輸入食品の件数が急増しているなかで、TPP批准により輸入食品件数のさらなる急増は不可避である。
検査体制の弱体化
では、輸入食品検査体制をそれに見合うかたちに強化できるのか。厚生労働省の考え方では、とても無理どころか、弱体化せざるを得ない状況である。