筆者は2月27日放送の『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)に出演して以来、大塚家具の経営権をめぐる紛争について見解を求められることが多いが、報道を見ていると的外れなものもある。あるテレビ番組で、「3月27日の株主総会で、発行株数の過半数をどちらも集められなければ、父会長側と娘社長側両方の取締役案とも成立せず、『第3の案』へと持ち越されてしまう可能性がある」と解説されているのを見て、驚いた。委任状を含めて株主総会における有効株数の半分以上を制したほうが勝つのが、会社法の決まりであり、どちらか一方が必ず勝つからだ。
筆者は同番組内で「大塚勝久会長が勝つ」と言い、「大塚家具は上場している公開企業なのに、同族企業の側面が根強いことが基本的な問題だ」と解説した。公開企業のため業績の回復や利益の多寡などの視点からも論じられているが、同社がまだ実質同族企業だからこそ、そして今回の騒動が父娘の対立という家族問題だからこそ、これほどまでに世間の耳目を集めているわけだ。
同族企業のことを、経営学では「ファミリー・ビジネス」と呼ぶ。上場している大企業でも、実質的なファミリー・ビジネスである企業はまったく珍しくない。トヨタ自動車、鹿島、ソフトバンク、ファーストリティリングも、上場しているが創業経営者や創業家が圧倒的な影響力・支配力を保持している。
ファミリー・ビジネスが上場した場合、創業者あるいは創業家全体の持ち株はわずか数パーセントにすぎなくなるのに、会社の経営に対してはいまだ実質オーナーのように振る舞い、それが社内でも市場でも違和感なく受け入れられているケースも多い。
大塚家具の場合、勝久会長は創業者であり18%超もの株式を所有する筆頭株主である。この持ち分は、上場している同族企業の創業者・現役経営者としてはとても多い部類に入る。このような経営者の影響力は圧倒的なものだと理解する必要がある。実際に大塚家具社内では勝久会長によるパワハラ的行為がまかり通っているという批判が、久美子社長側から指摘されている。それは裏返せば、勝久会長のカリスマ性の強さを物語っている。
●社長はひとりでは何もできない
一方の久美子社長は、大塚家具に受け入れられていない。外部で企業を経営していたところ、09年に突然勝久氏に呼び込まれ社長に就任した。創業以来勝久氏に尽くしてきた子飼いの幹部たちは、おもしろくなかったに違いない。しかし、「娘にやらせる」というカリスマ創業者の一言でやむなく従った。