ところが、久美子氏はそれまで700億円ほどあった同社の年商を約550億円ほどに低迷させてしまった。14年7月に久美子氏が社長を解任された時は、古手幹部たちは心の中で快哉を叫んだはずだ。そうした経緯もあり、今年1月に久美子氏が勝久氏を取締役会で解任したことを「クーデターだ」と勝久氏が評したのは、そのとおり社内で受け止められていたのだろう。
今回の父娘対決で筆者が一番注目しているのは、店長や従業員幹部のほぼ全員が勝久会長のほうについていることだ。久美子氏はそれを社員が仕方なく演じているかのように主張しているが、果たして本当にそうなのだろうか。突然登場した新経営者に思い切りかき回され、業績は悪化してしまった。その新経営者を連れてきた創業者が見切りをつけたとしたら、もう嫌悪感を隠す必要はない――。「勝久チルドレン」たちはそう思い動いたのだ。
大塚家の資産管理会社ききょう企画について、久美子氏の差配権の正当性に対して勝久氏側から訴訟が起こされている。その判決が株主総会の前に下されることはない。しかし、たとえ久美子氏が株主総会で勝利したとしても、店長や幹部の明白な離反にどう対処しようとしているのか。
「社長はひとりでは何もできない」というのが、洋の東西を問わない鉄則である。父娘対立に決着がついた後に、大塚家具が経営を立て直してうまくいくのか。実はそれは、同社にとって課題でもあり課題ではない。
「創業者の手によってこの会社が潰れるのなら、それはそれで仕方がない、しかし途中から出て来た娘社長との心中は真っ平だ」
これが店長たちの本心である。そして、「娘社長に勝ち目はない」と筆者が考える理由である。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)
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